はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ43)

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2人で手を繋いで歩くスーパーまでの道。
いつもならゆっくり歩くその道も、今日は少し早歩き。
いつもなら少し見上げれば見える辰哉の肩も、今日は斜め前。
絶対に歩幅を合わせてくれた辰哉がこうなってるんだ、もう私だってわかってる。

「辰哉」
「ん？ごめん速かった？」
「大丈夫。あのね、」

あのね、の後。
私は何を言おうとしたんだろうと急に分からなくなった。
さっきまで覚えていたのに声をかけた瞬間、分からなくなった。
まるで自分の脳がこれを言ったらダメだって言ったみたいに。

「やっぱり、なんでもないや」
「何それ気になるじゃん」
「まあまあ。ほら、お酒お酒」
「何本まで〜？」
「何本でもいいけど悪酔いしないくらいにしてね」

辰哉がえ〜と悩んでいる隙に私はポテチを買い漁る。
2袋じゃきっと足りない。3…いや、4？
もういいや、5袋買っとこう。どうせ賞味期限もそこそこに長いんだし。

辰哉のところに戻ると10本くらいの缶ビールや酎ハイをカゴに入れてにこにことご満悦な辰哉がポテチそんな買うの〜？と声をかけてきたがそれはこっちのセリフだ。
そんなにお酒買うんですか？弱いのに？そんなに家にあっても困るよ
とか言いながらも私もアルコール強めのお酒を3つくらいカゴに入れる。

結局お酒のせいでかなり重たくなったエコバッグは辰哉の肩、逆の方の手は私と繋がれて。
いつも通りの光景だけど、いつも通りじゃなくなる彼の後ろ姿、繋がれた手を、私は目に焼き付けた。