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目を覚ますと隣にはまだ辰哉は寝ていた。つまり、今日の夜まで、または夕方5時あたりまではここにいるということだ。
朝帰るわけじゃなかったことに安心した。
だけど、朝は来てしまった。
まあそりゃあそうだ。時間は経つのだから。
でも、今日だけは朝が来てほしくなかった。
嘆いていても時間の流れというのは変わらないのでちゃんと起きて朝ごはんを作る。
できたら辰哉を起こしてご飯を食べて今日は何しようかなんて話して。
最近の朝と全く同じ光景。
こういう朝が、本当に楽しかった。
「今日は最後だから思い出の地に行ってこようよ」
辰哉がそう言うから私は最後はとびきり可愛くしたくて、クローゼットの奥の奥。
薄い紫色のワンピースを引っ張り出した。
前回引っ張り出したのかわいいのとは違う、どちらかと言うと大人っぽい感じの膝丈の。
髪の毛を緩く巻いて、ナチュラルメイクをして全身鏡を見るとそこにはいつもより数十倍もおしゃれをした私が映っている。
ちょっと気合い入れすぎだって思われるかなぁ。
いい年なのに痛いとか思われるかなぁ…。
心配な気持ちを抱えたまま辰哉に見せに行く。
「辰哉…どう…かな」
辰哉は私を見た後フリーズしたしまった。
「まって、やっぱりなし。着替えてくる」
「いや！それで行こう！めっちゃかぁいい！その服装めっちゃ好み！」
「…ほんと？気合い入れすぎとか思わない？」
「全然！まじでかぁいい！早く行こう！」
相変わらずおしゃれな辰哉はそのかっこいい服装に合わないテンションで靴を履いた。
私はいつも通りスニーカーを履こうとしたんだけどふと思い直して靴箱から低めのヒールを取り出した。
ずっと履いてなかったけど今日くらいはと思って。
「ヒール履くの？」
「うん。たぶんそこまで高いヒールじゃないし身長も追い越さないと思う」
「たぶん10cm以上ヒールないと追い越さないからそこは心配してないよ」
「お、誰がチビだって？」
「言ってないじゃん」
ヒールを履いていつもより少しだけ高い世界に新鮮味を感じた。
辰哉の顔も少しだけ近くなった。
「じゃあ行こっか」
「うん。どこから行く？」
「佐久間の店じゃね？」
「あ〜確かに。でもお店入るのはやめようね」
「いや、せっかくだから会って行く」
辰哉の要望で大介のお店まで歩いて向かう。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
