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お風呂を終えた辰哉は、何をするでもなくベッドでスマホをいじる私の横に寝転んだ。
「どうしたの？疲れちゃった？」
「いや、なんかAちゃんの近くにいたくて」
「そっか」
私はスマホを充電器に挿して辰哉に抱きついた。
辰哉もそれに応えるように抱き返してくれた。
「Aちゃんさ、俺がいなくなったら、どうする？」
「…そうだなぁ。多分家に引き篭もっちゃうんじゃないかなぁ」
「それはよろしくないなぁ」
「そうだよねぇ。分かってはいるんだけどねぇ…」
辰哉は頭を撫でながら俺的にはね、と言葉を続ける。
「Aちゃんは佐久間と一緒にいて欲しいって思ってる」
「なんで？」
「あいつになら、任せてもいいかなって思って。もちろん本当は嫌だけどいざって時に俺はAちゃんを守ってあげられないから」
「…そっか」
私は、辰哉じゃないと嫌だ。
そんなこと言ったら辰哉はどんな顔するだろう。
困った顔？笑顔？それとも…いや、きっと彼は悲しげな顔をする。
だから私は言葉をグッと押し込んだ。
「辰哉」
「ん？」
「私ね、辰哉と会えてよかった」
「お、何々、そんなこと言っちゃう？」
「あの時、私に会いにきてくれてありがとう」
「俺が、会いたかったからさ」
そろそろ寝ようか。
そう言って電気を消しに立ち上がった辰哉。
今日寝てしまったら明日はもう…
そう思うと自然に体が動いていた。
「辰哉。やっぱりもうちょっとだけ起きてよう」
「ん？いいけど…疲れてない？今日俺、昼間に無理させたじゃん」
「大丈夫。もうちょっとだけ辰哉と話してたい」
「そっか。じゃあもうちょっとだけ」
2人でベッドの中。
抱き合ったまま小さい頃の話とか友だちの話とかをして笑って。
私の知らない彼を知っているお友達さんに少し嫉妬したり。
そうしていたのはたった数十分のことだったのに3時間にも4時間にも感じるほど密度の濃い時間だったと思う。
寝たくないと思ってても睡魔というのは襲ってくる。
もしかしたら朝起きたらもういないかも、なんて不安はあるのに。こんなとき自分の体が憎いと感じる。
辰哉の話を聞きながらうつらうつらしていると辰哉は話をやめて頭を撫でてくれた。
それから背中をポンポンとゆっくりと叩いてくれるので、それが気持ちが良くてどんどん意識が遠のいていった。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
