はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ32)

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目を覚ますとあたりは真っ暗。
あの後、私は寝てしまったのだと思う。
そして辰哉も例外になく。

辰哉を起こさないようにゆっくり起きてベッドの下に散らばる服の中から私の服を手探りで探す。
見つけたそれを身につけて私はキッチンへ向かった。
辰哉が起きたらご飯を食べれるように。

今日が終わればあと1日しか残っていないけど、その1日は明日24時間のことを指すのか、それとも彼が私の隣で寝てたあの時間までを指すのか、それともその12時間後の夕方なのかがわからない。
つまり、今夜はもしかしたら今日は最後の夕食になるかもしれない。
それなら少し豪華なものにしたかった。

でも、ビーフシチューとか、フランス料理とか、そういうものをぱぱっと作れる人が世の中では“料理上手”と言われるのであれば、私はそうでないから。
私が作れるもので彼が喜んでくれそうなもの…考えて浮かんだのは肉じゃがだった。
よく結婚した人たちにインタビューしたら妻が作った肉じゃがに胃袋掴まれましたなんて聞くし、肉じゃがには家庭の味が出ると言われているから。

肉じゃがを作りながら私は涙が出てきて止まらなくなった。
きっと辰哉が今起きてきたら驚くんだろうけど玉ねぎのせいってことにしよう。
ああ、本当に。

いつから私の行動一つ一つに辰哉がきたら…とか考えるようになっちゃったんだろう。
いつから私の世界の中心は辰哉になってしまったんだろう。