はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ27)

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頭を撫でられてうつらうつらとしていたら気づけば朝を迎えていて。
ああやってしまったと思った。
寝てしまったら辰哉と一緒にいる時間が減ってしまうから寝ない、なんて考えていたのに寝てしまった。
そしてやっぱり一緒に過ごす時間はまた減ってしまった。
まあ寝てなくても間違いなく減っていたのだけれど。

少しため息を吐き横を見る。
いつも通り辰哉が眠っていた。
昨日ソファーで寝てしまったのにベッドにいるということはやっぱり運んでくれたのかな、なんて申し訳なくなった。
時計を見るとそれなりにいい時間だったので朝ごはんを作ることにする。

ご飯を炊飯器にセットして、お味噌汁、それから卵焼きを作った。
卵焼きは高校生の時のお弁当にもずっと入れていて結構おいしい自信があった。
友達には毎回奪われて翌日、いやその翌々日まで卵焼きの予約が埋まっていたこともあったっけ。
懐かしいな〜と少し昔の思い出に浸っていると寝室から少し音がした。
辰哉が起きたのだろうと思って寝室を少し覗いてみる。

「辰哉〜おはよう〜」
「ん…Aちゃんおはよ」
「辰哉今日も寝癖すごいねぇ」
「ん…ねえぎゅーしよ」

寝起きで甘えたモードなのか目を瞑って寝転がったまま腕を広げる。
私もそれに応えるように抱きしめ返す。

結婚したら、毎日こんな感じなのかななんて。
少しだけ、本当に少しだけ。
私たちには絶対に訪れないその将来のことを、考えてしまった。

きっと、この人と結婚したら毎日幸せで、刺激に満ち溢れて。
素敵な人生を送れるのだろうと思う。
でも、それを望んではいけないなんてなんて残酷なんだろうか。

少し泣きそうになってしまったけどぐっと堪えて辰哉に顔を洗うように指示して食べる準備をした。