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表紙が少し違って見えるのは私の勘違い？
それとも辰哉がこっちに来てるからその間の代わりの人が…？
わからない。わからないけど、なんか漫画を開いたらダメな気がした。
開いてしまったらきっともう会えない。
だから何も見なかったことにして本棚に戻した。
部屋の掃除を終えてリビングに戻ると辰哉は目を覚ましてソファーの上で仰向けに寝転がるぼーっと天井を眺めていた。
「辰哉」
「ん…おはよ」
「おちついた？」
「うん。ごめんね。じゃあ早速だけどピアス開ける？」
「そうだね、開けようかな」
そう告げると辰哉は起き上がってソファーに座り、自分の足をトントンと叩いた。
「じゃあここおいで」
そう言われるままに辰哉に膝枕をしてもらう形で寝転がる。
辰哉はピアッサーを開封し、私の耳に触れた。
急に触られてビクッとなった私の頭を優しく撫でてから辰哉はピアッサーを耳元に持っていった。
ひんやりとした針が耳に当たり、少し怖くなった。
「冷やさなくていいの？」
「冷やしたらその時は痛くなくても後々もっと痛くなっちゃうから。冷やさなくて大丈夫」
辰哉の服をギュッと掴むと辰哉はまた頭を撫でた。
そろそろ開けるだろうと思って目を閉じて深呼吸をする。
上から「いくよ」と小さく聞こえたかと思うとパチン、と音がして鋭利な痛みを感じた。
痛みを感じたと同時に少し涙が出た。
痛かったから？…いや、辰哉に開けてもらえたからだろう。
悦楽、とでも言うべきだろうか。
最愛の恋人に、二度と戻れない痕跡を残してもらえたという感覚。
こんなことに喜びを感じる私は少し異常なのかもしれない。
でも、私は確かにそのとき幸せを感じた。きっと世界で1番幸せだった。
恋人とはいえ、他人の体に穴をあけるという2度と取り返しのつかないことをしてくれた彼に、すごく愛を感じた。これこそ至高の愛だと思った。
「大丈夫？痛かった？ごめんね」
「違うの。幸せで」
そう言ったら不思議な顔をされたからきっと私は他の人にはない、異常な思考を持っているのだろうと思った。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
