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弱音なんか吐かなかった彼の口から吐き出されたその言葉は。
彼が今まで抱えていたであろう不安、苦しみ、悲しみが全て込められているようで。
すごく重たいものに感じた。
「Aちゃんに帰るって言った後、自分でも帰るんだってのを改めて実感しちゃってさ。Aちゃんに悟られないようにいつも通り過ごしてたんだ。…ほら、俺あっちの世界では一応俳優みたいなもんだし！」
上手く隠せてたっしょ？と笑う。
確かに、そんなこと思ってたなんて気づくことができなかった。ずっと一緒に過ごしてたのに。
「ごめん、気づいてあげられなくて」
「いや。これは俺の演技のすごさが勝っただけ」
「…でもさ、どうせなら言って欲しかったな」
私は辰哉の彼女なんだから、と付け加えるとごめんな、と俯いてまた泣き始めてしまった。
ずっと泣かずに溜めてしまっていたんだろうし今日は存分に泣かせてあげようと思いまた抱きしめた。
辰哉はまた少しの間泣いていたかと思うと私の腕の中で眠ってしまったようだ。
起こさないように彼をソファーに横にして毛布を取ってきてかける。
眠っているにも関わらず溢れた涙を指で拭って髪の毛を撫でる。
なんか少女漫画で見られがちなシチュエーションだなぁ…まあ男女は別なんだけど。
なんて思ったが私もすることがなくて静かに掃除とか色々とすることにした。
辰哉が寝てるからリビングはできないけど寝室とかお風呂とかはいくらでもできるし。
私の部屋を掃除していたら懐かしいものを見つけた。
「うわあ。この本…辰哉が主人公のやつだ」
懐かしいその表紙に私は少し違和感を感じた。
「表紙が…ちょっと違ってる？」
表紙でヒロインと笑っているのは辰哉…そっくりの別人だった。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
