はじめまして。結婚してください。【紫】② (ページ20)

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私が抱きしめると私の腰に手を回して私を強く抱き寄せた。

「ごめ、俺、」
「うん。いっぱい泣きな」
「俺、俺、やだ、」
「うんうん」

私に抱きつきながら子供のように泣き続ける辰哉。彼の横には近くの薬局のビニール袋が落ちてた。
多分昨日言ってたピアッサーを買ってきてくれたんだろうなと思う。

「A、俺、俺…」
「うん。落ち着いてからでいいよ」
「俺…」

今、私が彼にしてあげられることは。

彼が泣いてしまった私の言葉を優しく聞いてくれたように、黙って側にいて私を見つけてくれてたように、彼の気が済むまでいっぱい泣かせてあげることだ。

嫌だ嫌だ、と私の肩に顔を押し付けて泣き続ける辰哉の頭を撫で続けてどれくらい経っただろう。

辰哉は深く息を吐いたかと思うと顔を上げて私を見て。

涙でぐしゃぐしゃの顔で、いつも通り笑った。
いつも通り、といったら少し嘘になるかもしれないけど。
ちょっと悲しさが残ってるような、でもいつも通りの笑顔だった。

「ごめんね。みっともないとこ見せて」
「ん〜ん。大丈夫。全然みっともなくないよ」
「ごめんね。Aちゃんが泣いてるの見たらなんか…つられちゃった。泣かないつもりだったんだけどなぁ」
「そっか」

もう恥ずかしい姿見せちゃったから行ってもいっかと小さく言った後辰哉は私を連れてソファーまで歩いて行った。
2人で並んで座った後、辰哉は真剣な顔で言った

「俺ね、やっぱり帰りたくないよ。漫画の中(あっち)に」