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起きたら隣に辰哉がいなかった。いつもならまだ寝ている時間なのに。
もしかして早めにあちらの世界に帰ってしまったのだろうか。
私がきっと泣いてしまうことを見透かして、何も言わずに。
「やだ、」
急に怖くなって家中を探し回った。
お風呂の中だってベランダだって全部探した。でもいなくて。
「帰っ…た？本当に？」
涙が溢れてきた。
だって、昨日お揃いのピアスを付けたいって言ったらピアッサーを買ってくるってそう言ってたじゃないか。それなのに話が違う。
「たつやぁ…」
玄関の前で壁にもたれて泣いていると玄関が急に開いた。
そちらに目を向けると
「たつや、」
「え、待ってなんで泣いてんの！？怖い夢でも見た！？虫！？ねえどうしたの！？」
辰哉が立っていて。
安心したら余計泣いてしまって。辰哉が私の前にしゃがんでずっとオロオロしてた。
そんな辰哉に抱きついて。
ああよかった。まだ、私のそばにいる。そう思った。
そうだ、まだ3日もあるじゃあないか。それなのに誰よりも優しい辰哉が私に何も言わずにいなくなるなんてこと、ありえないんだ。そんなこと、自分が1番わかっているだろうに。
少し落ち着いて辰哉から体を離すとなぜか辰哉も泣いていた。
「たつ…や、？」
「あ、はは、ごめ、俺…ごめん、」
辰哉が泣いているところを初めて見た。
いつも笑顔で、私に対しては絶対に怒らなかったしずっと気遣ってくれて、私が泣いてもうざがったりせずにずっと抱きしめてくれてた。そんな辰哉が今、泣いている。
唇を噛んで嗚咽を堪え、手で涙を拭いながら、なんとか笑顔を作ろうとしている。
その姿が痛々しくて、儚くて消えてしまいそうで。
守らなければいけないと、直感的に思って辰哉を、抱きしめた。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
