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帰る…？漫画の中に？
「そんな、じょうだん、わらえないよ、」
「…ごめん」
私の言葉に困ったような笑顔を貼り付けている辰哉の表情が、ごめんっていう3文字が。
私にそれが真実であると伝えた。
「なんで、」
「ごめんな。もっと早くこの事言っとけばよかったな」
「やだ、かえっちゃやだ」
「そんなかわいいこと言われても決まりなんだよね…はは…」
辰哉の話によると。
漫画の中からこちらの世界へ出て来ることにはタイムリミットがあって。
人によってそのタイムリミットは違うらしいのだけれど辰哉の場合は2ヶ月と決められていたらしい。
これを破るともうこちらには出て来れないし、あちらの世界に戻ってももう漫画の中に出てくる事もなく、誰からも忘れられて終わり。
だから帰らなければならないのだと彼は教えてくれた。
2ヶ月というタイムリミットは、こちらの世界に来た人の中だと今のところ最長なのだと彼は言い、ビールをまた口に含んだ。
私は、まだ状況を受け入れられず、というか受け入れたくなくて。
髪の毛を指でくるくると巻き付けながら彼の手の中のビールを見ていた。
「どうしたの。欲しいの？」
「…ほしい」
「ん。じゃあ飲みな」
「…のませて？」
「…仕方ないなぁ」
彼がビールを口に含みそのまま私にキスする。
唇の間からビールが流れ込んできてそれを飲むと辰哉は私から口を離した。
こんなことしたの初めてで、緊張によるドキドキと、アルコールによるふわふわした感じとが混ざり合って頭がクラクラする。
そんな私を見て辰哉は私から離れた。
「そんな目で見られたら俺我慢できないんだけど」
そう言ってまた少しビールを口に含むとシャワー浴びてくんねと部屋を出て行った。
2ヶ月が経つまであと5日間。
私たちができることは何だろう。
そんなことを考えながらソファーに横になるとすっと眠りの世界に落ちた。
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作者名：雪野真哉 | 作成日時：2024年3月15日 22時
