46.理由 ページ47
覚えていた。
覚えていてくれた。
ちゃんとした言葉ではないけれど、彼が口にした約束が真実を告げていた。彼は降谷零であると。
やっと止まりかけた涙を拭いながら言う。
『私のエゴだったの…。まさか、答えてくれるとは思わなかった…』
涙を拭いながら零くんにそう聞けば困ったような笑顔で返される。
「俺も話すつもりはなかったけど、Aにあんな顔をさせ続けたくなかったんだ。」
『あんな顔って…』
「…泣きそうな顔。」
その言葉に目を見開く。
そんな、分かりやすかっただろうか。
「だから話した。」
恐らく、本来なら自分が降谷零であることも明かすことはなかった。それはきっと彼の意思ではなく仕事の関係だろう。
夢を叶えたという言葉で、零くんが警察官になったことは分かった。だから恐らく、彼が小五郎さんの元で安室透の名で私立探偵をしているのは何かしらの捜査の為なのだろう。
『私、結構ポーカーフェイスできてたと思ってたんだけどな。』
ちょっとだけ冷めてしまったココアを口に運ぶ。
冷めても美味しい。
「普段は出来てるけど、油断するとすぐ顔に出るからな。」
『マジか…もっと気を付けないと。』
「けど…」
その瞬間、耳元で彼の心地いい低音が響く。
「俺の前では、油断してくれてもいいぞ。」
『〜〜っ!?』
思わずガシャンッと飲み切ったココアのカップをソーサーに乱暴に置いてしまう。
ごめんね悪気はないのよ。
『…顔がいいからって』
「お褒めの言葉ありがとうございます！」
ｶﾗﾝｯ
「ただいま戻りましたー！安室さん店番ありがとうございます！」
その時、買い物袋を抱えたもう1人のポアロの店員である梓さんが買出しから戻ってきた。
……だから急に安室透に戻ったのね…。
ニコニコとする笑顔がちょっとだけ憎たらしい。
けど、私にだけ降谷零として接してくれると思うと嬉しいな。
「あっAさんいらしてたんですね！ゆっくりして行ってくださいね！」
『はい、ありがとうございます！』
梓さんは可愛くてとてもいい人だ。
新一くんから聞いていた通り、彼女のファンが多いのも頷ける。
彼女はそのまま買ってきた食材を奥のバックヤードに仕舞いに行った。
『…ココアも飲み切っちゃったし、長居しちゃったからそろそろ帰りますね。』
席を立ってレジに向かえば零くんが精算をしてくれる。
「…そう言えば、安室の時も名前で呼んでいいか？」
『…うん、名前で呼んで。』
そう伝えれば、彼は満足気に笑った。
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YuasA(プロフ) - †NANA†さん» ご指摘ありがとうございます。先程訂正いたしました！ (2022年1月7日 16時) (
レス) id: 5892518060 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ24で、「電話したもんだな」が「電話わしたもんだな」になっています。 (2022年1月7日 15時) (レス) @page24 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：YuasA | 作成日時：2022年1月1日 23時
