ー 第三特異点 11 ー ページ12
アルジュナはゆったりと形のいい唇を開く。
「・・あの地で、
カルナとの対決だけを望んでいた時間は、
決して退屈などではありませんでしたが・・
思えばそれは即ち、
そのこと以外に見出せる、私の目的が、
なかったのだろうとも言えます。
故に、私にとってのあの時間は、
無意味ではなくとも、決して、
有意義な時ではなかったのでしょう。
貴方と出会うことで、
私の道は変わったのかもしれない」
「ーー君は、それをどう思ってる？」
アルジュナの目線がこちらに留まる。
「・・標(しるべ)であったのでしょう。
私が、私として手に入れることが出来た、唯一の」
ーーすべてがお膳立てされていた、
授かりの英雄として、ではなく、
一人の英雄、アルジュナとしての。
「そしてはじめての」
彼の目線から察するに、
その言わんとするところは、
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「ーーそう。そうだね。
それでこそ君はアルジュナだ。
だからこそ君は俺のサーヴァントだ。
君が得たものはこの先、
どこまでも君の中に在り続けるんだと思うよ」
ーーそれが
誰も正せないものに変異しても
誰かに正してもらうこともないまま
変質していってしまっても
「ーーありがとう、アルジュナ。
俺と出会ってくれて。
俺のサーヴァントであってくれて」
ーーいつか
その結果が何かに変わったとして
その結果が何らかの歪に変わったとしても
「ーーええ、秋。私のマスター。
貴方は私のマスターだ。
いつまでも、どこまでも私の。
ーーこのアルジュナのマスターだ」
それを正しくも正しくなくとも
正しいと思うままに正しいと思えるように
正すことができるのは、
君のマスターである俺だけだろう。
「ーー・・・ 、すまないーー」
「マスター？」
アルジュナはなんの迷いもなくこちらを見つめている。
ーーそう、なんの迷いもない瞳で。
「・・いや。君の瞳は、時折俺を見つめたまま、
動かなくなるな、って思ってね」
「・・あぁ、済みません、マスター。
私としたことが、
許可なく貴方を見つめ続けるなど、」
「いいさ、大丈夫。仕方ないね」
ーーアルジュナ
そんな君に、俺は謝らなくてはならない。
ーー俺と契約をさせて、すまない。
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作者名：遊藍 | 作成日時：2019年5月4日 21時
