漆黒の禍狗はパパになったようです

まいご ４ ページ19

その頃、マフィアでは近年稀に見る大騒動が起こっていた。

何でも、ポートマフィアの禍狗、芥川龍之介が愛してやまない妻、Aから買い物中に愛娘の治春がいなくなったという連絡を受けたというのだ。

娘を溺愛してやまない芥川は、其の報せを受けた途端、端末を壊しかねない程に握り締め、

「…捜索班を総動員しろ。3分以内に治春の場所を割り出せ」

と、其の場にいた樋口や黒蜥蜴が冷や汗を流す程の殺気を放って告げたのだった。

「芥川先輩！治春ちゃんの居場所が特定されました！」

マフィア本部の会議室で『治春ちゃん奪還作戦会議』をしていた芥川とA、幹部の中原、尾崎、更に首領の森が捜索班からの報せを持ってきた樋口に反応する。

「…何処だ」

芥川から、抑えられない殺気が漏れ出す。

「…武装探偵社だそうです」

樋口がそう告げた途端、ミシリと机にヒビが入る。

「探偵社か…。まさか、人虎め…」

「あァ…。治春を拐った奴が誰なのか、
大体察しが着いたな」

芥川と中原が、特にこうと云った根拠も無く、特定の誰かに怒りを向ける。

「これ、二人とも犯人が誰と決めるには少し早くは無いかえ？…とは云っても、探偵社め。Aを泣かせた上に愛い治春を拐かすとは…許してはおけないのぉ」

と、一応二人を諌めつつも、夜叉を隠しきれない尾崎。

「ふむ…まぁ、此れで治春ちゃんの居場所も割り出す事が出来たし、A君、もうそんなに泣か無くても良いよ」

首領が、皆の様子を見て云う。

「さあ、皆、そろそろ治春ちゃんの『お迎え』に行ってあげなさい。エリスちゃんが、治春ちゃんと一緒に遊ぶ約束をしていたからね。」

冷静に、にこやかにそう告げた首領も、云った言葉は穏やかだったが、確かに怒気を孕んでいた。

斯くして、ポートマフィアは『治春ちゃん奪還作戦』を遂行するべく、探偵社に向かったのである。

まいご 5→←まいご　３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す