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「……今のは私のお腹の音、です」
恥ずかしくなり、サクラは俯き加減で答えた。
ああ、レポート書くので忙しくてお昼ご飯をまだ食べていないんだった。こんな事になるならちゃんと食べておけば……。
サクラの中に羞恥心と後悔が渦巻いた。
「なんだ、お前の腹の音か」
オビトが笑うので一層恥ずかしくなった。
「そういうのは普通スルーするものですよ」
「俺は普通じゃない」
そう返されるとこっちは何も言えない。確かに何も食べなくても生きていけるなんて普通の人間じゃない。
「……腹も鳴らないし、そもそももう腹が減るっていう感覚も忘れた」
「……!」
「最後にまともなものを食ったのは…いつだったかな、多分20年くらい前だと思う」
家族が一つのテーブルを囲んで食事をすること_____。
自分にとって当たり前の事が、彼にとっては当たり前じゃない。彼に暖かい食事を出す人も、向かい合ってテーブルを囲む人も、彼にはいない。ずっと彼はずっと一人で生きてきたんだろう。
自分も幼い頃の無知で未熟な頃と違い、今はもう一人前の忍者で、大人だ。家族がいない辛さは今ならもう十分理解出来る。大罪を犯したとは言え、やはり情を捨てきれなかった。
「……もう行け。腹減ってんだろ」
「オビトさん」
「……なんだ」
オビトと真っ直ぐ目が合った。
「明日、朝ごはん作ってきてもいいですか」
「はあ?」
サクラの言葉にオビトは目を丸くした。
同情だろうか?自分でもどうしてこんなことを言ったのか分からない。でもー…
「朝ごはんって大切だと思うんです。今日も1日が始まるって…朝ごはんを食べる事で気づけるんです」
「さっきの話、聞いてなかったのか」
「聞いてました。でも……」
「そんなもん要らん。もうそろそろ帰れ。お前だって仕事あるんだろ」
サクラはオビトの言葉を受け、鉄格子の外に出て鍵をかけた。
「………また明日見回りに来ます」
「ああ」
サクラは頭を下げ、オビトに背を向けた。
「サクラ」
呼ばれてサクラ後ろを振り返った。
「……お前はちゃんと飯食えよ」
「自分は食べないって言っておいて…」
「俺はいいんだよ」
「はあ……」
意外だな、とサクラは思った。
まさか自分の身体を心配してくれてるなんてね。
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いずな - オビトェ… (2018年11月30日 23時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘ゆら | 作成日時:2018年11月29日 2時