優しい嘘と冷たい言葉 (ページ13)

今日:16 hit、昨日:34 hit、合計:1,219 hit

010 ページ13

「あーいい子ぶってる結萌〜」

先程のクラスメートが明らかに声の大きさをかえてそう言った
皆それを聞いてクスクスと笑っていた
流石にこればかりは結萌も気づいたみたいだ
結萌の様子を伺おうと顔を見た
…その時一気に血の気が引いた
…今までの柔らかい笑顔を浮かべてた人物とは思えないほど彼女は怒りに満ちた目で先程のクラスメートを睨んでいる
…まずい
これは…何とかしなくてはならない
このままでは結萌がクラスメートを殴りにかかるかもしれない
…実際、そんなことをしないだろうが
今の私にはそんなことをしそうに見えた
それほどその表情は恐ろしかった

でも、もしかしたら結萌は傷ついているのか…？
この表情だけじゃ分からないが
もしかしたらとても傷ついたのかもしれない
…私のせいで結萌は傷ついたのかもしれない…
例え今、傷ついていなくとも
私と関わっていけばきっとまた陰口を言われることになるだろう

…そんなのは私が嫌だ

…このほんの3週間ほど
私は結萌となら、友達になってもいいと思えてきた
信じていいと思えてきた
彼女の話す内容は愚痴もあったが最終的には相手を思いやる言葉が沢山出てきていた
例えば怒られた時なんか
…まぁ、あの人だって怒りたくて怒ってるわけじゃないんだろうけどねわざわざ怒りたい人なんてそうそういないし、あの人を怒らせたのは問題を起こした私
あの人に怒るという行為をさせたのは私だからなぁ…しっかり反省しなきゃいけないよね…うん
…と、相手を悪いままにして終わらせるような話は一切なかった
まるで彼女は完璧な悪だなんてこの世に存在しないということを私に教えてくれているみたいだった
…私はそんな人を想いやれる彼女が気に入ったし、彼女の話し方も上手かったので楽しく話を聞けることが多かった
…鬱陶しいとかしつこいとかは上辺だけの気持ちだ
本当は嬉しいんだ
こんな私に飽きることなく話しかけてくれて
例え嘘笑いだとしても…私に笑顔を向けてくれて
それに、最初この子は悪いやつだと思ってた
…だけど、それは偏見に過ぎなかったのかもしれない
実際は本当にいい子だ

…この3週間でそういうことがよくわかった
友達になりたいとも思えた

そんなにも想えた人が傷つくのはいやだ
…例え今、私が言う言葉で傷ついても
これから先はもう傷つくことなんてない
…なら、いいじゃないか
私は覚悟を決めて結萌に向かって言う