014 ページ14
＊
とりあえず今の私達にはどうにもできない、ということで大広間に戻ろうと来た道を引き返すことにした。あと10mと少しで大広間、というところで突如シバが私達の前にはだかるように立ち止まり強く吠えた。何度も、何度も威嚇するように、大きいだけじゃない凄みのある吠え方を繰り返す。
すると、その音の合間から小さな足音が聞こえる。こちらへ、向かってきている。
思わず身構えると、曲がり角から現れたのは見覚えのある長身。
「イェジュニオッパ。」
「……の別人格ですよヌナ。」
……え?おかしい。
ジョンホ君が私の腕を引いて後ろに隠した。そして小さく目の色のこと知らないんですか、と囁く。
その言い方だとやはり私が夢で会った毒々しい緑色の目をした彼は、幻覚の能力の反動によって生まれた別人格でまず間違いないだろう。
しかし、それならばなおのことおかしい。
「いや、知ってるけど……今別に目の色普通じゃ――」
「あーもう駄目だよジョンホヤ。
……折角、『Aにだけは普通に見えるようにしてた』のに。」
重くため息をついた兄が大きく瞬きをすると、その眼からのぞいたのは人間にはまずないエメラルドだった。
「何でそんなことを。」
「何でってヨサンア……妹の前位真面目に兄をやっちゃダメかな?」
ね、Aと私の名を呼んだ彼は目の色は違えど確かに兄のそれである視線を向け微笑んだ。
……もしかして彼の資料に書かれていたことはこういうことか?人格は違えど唯一私のことだけは元の人格通りに認識している、と。
だってほら、私の兄はあんな風に人を睨むことはまずない。
「ちなみにヒョンは『あの部屋』からどうやってっ出たんですか?ヒョン達が能力を使ってたと思うんですが。」
「は?そんなのずっと前に切れてるよ。
あの2人が眠るときに全て解除した。
多分疲労が極限まで溜まった状態で、お互いの身を確実に守ろうと思ったら僕相手に能力を解くしかなかったんじゃない?特にあの2人は能力が強い分精神力、体力共に削るからねぇ。
来るのも一番遅かったし、何しろここは無人島。
船はない。ネットの使えない状態で僕はフェリーのチケットも取れない。
どこかに逃げる可能性もないと見込んだんだろう。
…………まぁ事実出られないんだけどさ。
正直僕はそこのAさえ健康で無事に元気に幸せに暮らしてくれるなら他のものなんてどうだっていいんだ。」
なぁサナ、と彼は口端を吊り上げた。
――お前たちまだ夢見足りないだろ、と。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Tie(プロフ) - 初めまして。ateez目的で読み始めましたが、(地球滅亡の方と共に)とても好みの作品で1作目から何周もしています。もう更新されることは無いかもしれませんが、こんなに面白い作品を作ってくださりありがとうございました。楽しく読ませて頂きました。 (2022年9月3日 17時) (
レス) id: 031775e238 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - かまみのさん» 初めまして、お褒めの言葉をありがとうございます。更新やレスポンスにお時間が開いてしまいすみません。本編終了後にはもっとじっくり彼らとの小話も書いていきたいですね……！コメントありがとうございました！ (2020年10月10日 21時) (レス) id: 2ace97a462 (このIDを非表示/違反報告)
かまみの(プロフ) - めっちゃ面白い！NCT好きだから出てきて嬉しい (2020年9月2日 23時) (レス) id: 30d38f5d7d (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - オンマさん» 初めまして、温かいコメントをありがとうございます！最近忙しくて、前のように頻繁に更新できるかは分かりませんが頑張りますね！私もハマっているので同じ趣味の方がいらっしゃって嬉しいです^^ (2020年5月7日 1時) (レス) id: 959b48d95f (このIDを非表示/違反報告)
オンマ(プロフ) - はじめまして。 この話を見つけてイッキ読みしました^^ のめり込んでいます。 面白い。 頑張ってください。 私は、ATEEZにハマっています。 (2020年5月6日 21時) (レス) id: 51e1e6ee34 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
