もしもこの恋が出来たなら2 (ページ14)

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那須side

高校3年、夏休みが終わった頃。

あの日からちょうど１年が経った。

今でも忘れられない、屋上の階段。

俺はあの日以来立ち寄ってなかった。

久しぶりに足を運ぶと、そこはまた冷たい場所だった。

最後の階段へ登ろうと折り返そうとしたら、

｢うぉっ、びっくりしたあ｣

思わず声が出て驚いたけど、そこには既に先客がいた。

そりゃ、誰かいてもおかしくないか……

諦めて引き返そうとした時、

『ちょっと待ってください！！！』

知らない人に呼び止められた。

お弁当を見せてくれる、とかなんか言って笑

数日経ってもその子はずっと俺を待っていた。

俺の姿を見る度にぱぁあと明るくなる顔が

なんだか、俺の心を久しぶりにくすぐる。

次の日も、その次の日も

俺の姿を見ては元気いっぱいの笑顔を向ける。

でも、

俺にはどうしたらいいか分からなかった。

かすみへと向けていたあの時の気持ちと重ねちゃダメだって

去年の自分が言い聞かせるように思えたから。

そう考えると、

この子との距離を離すようになってしまった。

わざと、遠回りな言い方。

嘘をついたり、適当な返事。

卵焼きは、本当は甘いのが好き。

だから、1口貰ったあの卵焼きはめっちゃ美味しかった。

だけど

素直になると失ってしまうものが怖くて

俺は偽善者を装ってしまう。

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