陸拾伍話 ページ20
義勇side
じゃらり………
何か金属音が擦れる音に、義勇の意識は覚醒する。
「…………どこだ?」
未だに朧気な思考を叱咤し、現状を確認する。
俺は今、何処かの地下室に閉じ込められているのだろうか。
窓も無く、一切の光が差さないこの部屋にあるのは、簡素な椅子と机と出入口であろう鉄扉だけだ。
自分を拘束するのは、先程の金属音の正体であろう手枷。
腕を後ろに回されて、自由がきかない状態だ。
こんな事が出来るのは人物……心当たりはひとつしかない。
義勇は何とも言えない表情でため息をこぼした時、
『ん、義勇起きたの?』
「………! (Aも)いたのか?」
隣から聞き覚えのある、女性の声が聞こえ、振り向く。
そこには、少し眉を寄せて困った表情をするAがいた。
自身と同じく、後ろで手枷を嵌められている。
いつも着ていた夜色の羽織りは、取られたのだろうか……
彼女特有の左右で違う瞳が、この暗闇でも強く主張している。
『ごめんね、私が油断しちゃったから………』
「気にするな、それを言うなら俺も同じだ」
もし、この場に錆兎がいたならば拳骨の一つや二つは食らうだろう。
柱二人が鬼でもない一般人に捕まるなど、御館様にどう顔を見せればいいのだろうか。
しゅん、といつものにこやかとした表情に陰りがさすのを見て、義勇は口を開く。
「A、お前ならば(この手枷)壊せるか」
『そう………だね、無理やりやれば壊せそうかな?』
でも、今はまだやりたくない…と。
彼女曰く、自分達をこうも容易く捕捉した程の人物だ。それを考えれば、消息を絶った隊士達の原因はそいつにあるっと。
ならば、そいつから情報を聞き出してからの方がいいと言う。
『それに、こんな都合のいい展開、鬼と手を組んでいる可能性もあるしね』
「…………承知した」
Aの意見を聞き、義勇は頷く。
彼女はいつもそうだ、
予想外の展開が起きても、直ぐに冷静に合理的に行動する。
そんな所を、俺は学ばないといけない。
二人で今後の作戦を立てていると、この部屋唯一の出入口である鉄扉が、重たい音を響かせて開いた。
そこに現れたのは、予想通りと言うべきか………あの初老の男、正和の姿があった。
74人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
尊い - 続きが速く見たいです (2022年3月26日 23時) (レス) @page11 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 続きが気になるぅぅぅぅうぅぅう!!!!更新楽しみにしてます! (2022年3月18日 8時) (レス) @page11 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:わんフル | 作成日時:2022年2月22日 8時