辻村の憂鬱25 ページ35
辻「鑑識も入りますし、どう見てもただの井戸でしたから。鑑識の方で何か手掛かりが見つかりますよ。井戸が全ての悪のきっかけなんて変ですし、特務課の資料にも『人を悪にする異能』なんて見つかりませんでしたし」
あの綾辻先生がお手上げだと言うなんて思ってもみなかった。けどなんとなく鼻っ柱をへし折れた気分で割と楽しい。
そんな気分も次の言葉でかち割られたが。
綾「別の手がかり?辻村君、そんなものが本当にあると思っているのか。あの井戸が最初で最後の把手だ。何故ならあれは井戸だからだ」
辻「井戸なんて他にもたくさんありますよ。なんでそんなに井戸が引っかかるんです?」
綾「井戸には善くないものが湧きやすい。君も怪談話の一つや二つ聞いたことがあるだろう。
皿屋敷の怪談だ」
それって確かお皿を夜な夜な数えて「一枚足りない〜」っていうあれ?
何処からともなく声が聞こえてくる。
地の底から這い出るような囁き声にぴちゃんぴちゃんと水の音が混じる。
「八、枚、九枚、一枚、
足りない………旦那様に怒られてしまう……うらめしやぁ」
辻「いやあああぁぁぁぁっ?!」
思わず悲鳴をあげてしまった。アクセルを踏みそうになって目を剥く。
辻「やめてください、Aさん!」
A『すみません………行人さんに命じられたので』
辻「なんかこそこそ懐中時計見てると思ったらAさんに何させてるんですか!ていうか運転中なんですけど?!」
綾「良い反応だな。やはりいじめがいがある」
辻「怒りますよっ?」
水の音がするのは当たり前だ。事務所にセットされたAさんの通信は盥の水を使っているから。
綾「さっさと前を見ろ。続きを話してやる」
辻「続きって……怪談のですか?」
綾「皿屋敷の怪談の続きを聞きたいなら事務所でAに聞け。夕食の支度をしながら頭から暗唱してくれるぞ」
辻「あのトーンで全部聞いたら寝れなくなりそうなので辞退します」
綾「それは残念だ。
まあ殆ど事件は人間が人間を殺すというだけだ。霊魂や死後の世界も存在しない。少なくとも今回は関係ない。今回の首謀者は、そういう“曰くつき”を演出したがる奴だ」
辻「演出、ですか」
綾「ああ。井戸は実にあいつ好みだ」
綾辻先生は事務所を出る前にも同じことを言っていた。Aさんも「井戸は冥界の入り口」だと言っていた。
ということは、二人は井戸のワードを聞いた時から首謀者に心当たりがあったことになる。
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時