【文豪ストレイドッグス】綾辻行人殺人探偵の人形

辻村の憂鬱１９ ページ29

綾「感情は非物質的なものだ。よって質量保存の法則は適用されない。
一度に二人に恋をしたとして、その場合一人当たりに注がれる関心は半分になる。
どちらかを強く好けばもう一人に向けられる関心は減る。
愛は分割するものではなく増えるものだという」



ああ、少し分かった。
愛情は何人でも減ることなく注がれるものということか。



辻「先生がAさんに抱く感情はどちらなんです？」



愛情、恋情、同情。
そういったものを嫌うように見えた先生が、少し人間味を帯びた気がした。



綾「Aが抱くのはおそらく愛情だろうな。
俺が抱くのも。
俺にとっては全ての人間に価値などない。
ただAがこの事務所に居て、俺の話を聞いていればそれでいい。
あいつだけ、俺を理解してくれればそれでいい」



愛してるだとか愛してないだとか、そんな次元ではない。
互いしかいないのだ。
Aさんには綾辻先生しかいない。
綾辻先生はAさん以外に価値を見出せない。
これほど世界は広いのに。
互いしかいらないなんてものじゃない。
相手しかいない。
ふたりぼっちの世界に生きている。

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