辻村の憂鬱18 ページ28
綾「ないぞ。むしろ手を出そうものなら鏡面世界に逃げこまれて1日は出てこないだろうな」
辻「ふざけてません?」
綾「冗談はさておき、これは事実だ。
俺がAをここに置いているのは人形を側に置くのと同じ感覚であって、恋情で置いているわけじゃない。
俺の綺麗な愛玩具(ペット)だな」
ペットは言い過ぎじゃないかと思ったけどそれは言わない。
綺麗な愛玩具、と先生は言った。
ではAさんが美しさを失ったら。
大怪我をして目も当てられない姿になってしまったら、先生はAさんを------------捨ててしまうのだろうか。
Aさんはとても綺麗だ。
女の私から見ても目を惹くほどに。
もしその「美貌」がAさんの存在価値であり存在意義なら。
それを失えば彼女は自らの手で命を絶つかもしれない。
辻「先生が彼女を置いているのは、美しいからだけなんですか?」
そうではない、という予感はする。
全ての人を無価値と感じる先生が、唯一側に置き可愛がる人なのだから。
特別、なのだと思う。
綾「………君は恋情と愛情の違いはなんだと考える?」
しばらく目を伏せていた先生がポツリと呟いた。
辻「恋情と愛情の違い、ですか?えっと…………………」
考えこもうとしてハッと話がずれていることに気がつく。
辻「話を逸らさないでください」
綾「いいから答えろ」
辻「分かりましたよ…………………恋情は恋で、愛情は家族愛とかですかね」
綾「陳腐だが妥当なところだな」
辻「陳腐って……じゃ、先生は何だと思うんです?」
先生は椅子から立ち上がりAさんが昨日アップルパイに使わなかった林檎を二つ左右の手に乗せた。
右の手を背に隠し、私からは林檎が一つしか見えないようにして口を開いた。
綾「例えばだ。
恋情は二人に分けようとする時……こう。
等分して分け与える」
指で林檎の正中線をなぞって示した。
これで林檎は半分こされて、二人で分けられるようになった。
綾「愛情はこうだな」
そう言って綾辻先生は後ろに隠していたもう一つの林檎を出した。
私の目の前には林檎が二つある。
こうって………どうですか?
よくわからない。
辻「一つの林檎が二つに増えることはないですけど……………」
先生は何とも言えないというような表情になり、ゴツッと林檎で私の頭を小突いた。
痛い。
恨みがましい目で見上げると先生はその林檎を放ったりキャッチしたりしながら続けた。
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時