辻村の憂鬱16 ページ26
時間になり、私が立ち上がるとAさんは私にコンパクトミラーを渡した。
辻「何ですか?」
A「通信用」
通信用?このコンパクトミラーが?よく見てもただの鏡だ。洒落たデザインで時計の模様があしらってあるくらいだ。
鏡、鏡。あ、そういうことか。
Aさんの異能は鏡を操る。
鏡越しに会話ができるのだ。
辻「ありがたく受け取っておきます。では、また明日。
綾辻先生、Aさんの報告書、明日提出ですからね」
釘を刺して部屋を出る。
ドアが閉まる寸前、綾辻先生がポツリ、と呟いた。
綾「………か?」
辻「何ですか?」
綾「いや、“何か忘れている”んじゃないか?」
何か忘れ…………………忘れ……………ああああ!
辻「ああああああああああ!」
しまった、昨日の報告書が!
教会の殺人事件の報告書、書いてもらうの忘れてた!
綾辻先生はにやにやと笑いながら続けた。
綾「今日は時間切れだな」
綾辻探偵事務所は監視班に報告を事前にしてある時間内しか滞在できない。
厳密にはできるのだけれど、後で先輩にこっ酷く叱られ、監視班の人には文句を言われることになる。
声も出せずに呻く私の前でドアはゆっくり閉まっていった。
今日は厄日だ。
ちなみにこの後、私がお風呂に入っている間にコンパクトミラーから細く丸められた報告書が転送されていた。
綾辻先生の字ではなく、万年筆で書かれた角張った字だった。
Aさんの字なのだと思う。
字の丁寧な男子中学生みたいな字だと思った。
辻「達筆じゃなかったんですね…………………」
しかも多分綾辻先生に言われての口述筆記だろう。
こんな遅くまでご苦労様です、と思ってしまった。
特務課も相当ブラックだけど、365日24時間無休の綾辻探偵事務所は飛び切りだと思う。
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乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» 同い年ですね! (2019年8月17日 21時) (レス) id: a46352e6e0 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 乾 巽さん» 同い年……オーマイガァー (2019年8月17日 20時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 赤珠さん» ありがとうございます、そんなこと言われたの初めてです。因みに年は今15です (2019年8月17日 11時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
赤珠 - 文才力の塊……。その文才わけてください← この小説とても面白くて大好きです!!私も作者様と年変わらないと思うので……羨ましいです……。 (2019年8月17日 11時) (レス) id: 8dc3cc174c (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - ありがとうございます、頑張りますね (2019年8月10日 10時) (レス) id: c1b6b5f4c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年1月23日 16時