第281話:特別 ページ45
「……これで、完成っと。」
来たる土曜日、約束の時間まであと15分。
「立っていいよ。お疲れ様。」
母の言葉で、皺が付かないよう慎重に座っていた椅子から立ち上がり、全身鏡を覗き込む。
「自信もっていいわ。会心の出来。
かわいいわよ。」
最後に厳選したリップを塗ってもらって、ぽんと両肩に手を置かれる。
母の新品のリップだけど、今日は私が使っていいらしく、私の鞄に入れてくれた。
「お母さん、ありがとう。」
「私も楽しかったからお礼はいいわ。楽しんできなさい。」
「……うん!」
入念な最終チェック、携帯を片手にそわそわしていると、あっという間に時がすぎていく。
無意識に澄ましていた耳に、家の前で止まったらしき車のエンジン音が届けば、インターホンが鳴るのはすぐだった。
ピンポーン。
ぴったり時間通りだ。
インターホンを確認しているらしい母の、「は〜〜リアル王子……イッケメンねぇ〜……!」という呟きが遠くで聞こえる。
やめてやめて。
ぱたぱたと鞄を持ち、靴を履いて玄関の扉に手をかける。
う、うわ、やばい、私めちゃくちゃ緊張してる。
明らかに速い鼓動を自覚しつつ、ゆっくり扉を開けると。
「ーーー……!」
扉の可動域の一歩後ろ、その位置に彼は立っていた。
学校や部活で見る感じとは全然違う雰囲気。
今日が「特別」な日で、明確にそういう意図を持って整えられた服装なのだとひと目でわかる。
特別。
普段の彼に輪をかけて、一層、甚だしく。
ーーーか……かっこいい〜〜……ッ!
覚悟してきたつもりなのに、予想の何倍をも軽々超えるほど、眩しく、華やかに、きらきらしい。
あまりにも素敵な美青年で、心臓がぎゅうっと上に持ち上げられた心地がする。
「ーーー……こんにちは。時間通りと思ったけど、待たせたかな。」
暫く見合ってしまい、私が何も言わないので、赤司さんがそんな風に切り出してくれた。
「いえっ、あっ、えと、こんにちは……お迎えありがとうございます、時間ぴったりです。」
わたわたと返す私を見て、ふ、と力を抜くように微笑む彼。
その仕草でさえ、うわぁ、だめだもう、いちいちかっこいい。
「そう。待たせたようでなくてよかった。
……今日の服装、とてもかわいいね。よく似合ってる。
いつもと雰囲気も違うけれど、今日の為に準備してくれたの?」
「、はい、」
あまりに自然に褒めてくれるから、一個一個に感情と返事が追い付かない。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時