朱に捕らわれば赤くなる６【赤司征十郎】 (ページ44)

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第280話：王子ページ44

一般市民である私が何故王子様の目に止まり、口説き落とされたのかは未だに謎である。
彼の心の内など誰にも読めはしないのだ。

「とにかく、王子様系彼氏との初めてのデートに向けてちゃんと備えたくて、母からのアドバイスが欲しいと……そういうことで合ってる？」

お、王子様系彼氏……？笑
そう言われるとちょっと面白すぎるけど、｢赤司様｣だし、まぁいいか。

｢うん。

私、恋愛経験も無いし、外に遊びに行くこともあんまりないし、流行りとかおしゃれとか、同世代の女の子がどういう服を着るのかもよく知らないし、ましてデート服なんて正直検討も付かなくて……。

お母さんの顧客層…？とは違うことは分かってるんだけど、少し相談したくて、良かったら助言してくれないかなって……｣

｢するに決まってるでしょ！こんな時くらい遠慮せず頼りなさい。
お母さん、嬉しくてしょうがないわ。はりきって手伝うわよ。｣

ぎゅう、と私の肩を抱いて、被せ気味にそう言う母。

｢……ほら、あなた、色々あったじゃない。
テツヤ君以外の男の子にはまだ苦手意識というか、距離があるのかと思ってたから、彼氏と初デートなんて聞いて驚いたけど……。
でも、そうよね。もうそんな年頃なのよね。｣

私の頭をぽん、と撫で、愛おしげに微笑む。

｢お母さん……｣

｢現役デザイナーをナメないことね。安心しなさい、完璧にあなたの魅力を引き出してみせるわ。
自分じゃわからないかもしれないけど、葵希だって王子様に見合う素質持ってると私は思ってるわよ。｣

私の娘ですもの。
そう言ってウインクする母はなんだか活き活きしていて、頼って良かった、と心底思う。
こんなに喜んで引き受けてくれるとは思ってなかったから。

｢ちなみに……その彼の写真とかは持ってる？見たいわ。
雰囲気とか、せっかくなら合わせたいわよね。｣

｢えっと、ある。待ってね、｣

少し前の勉強会の時にさつきちゃんや黄瀬さんが撮ってくれていて、共有してもらった写真が何枚かある。
私服の写真だし、ちょうどいいだろう。

逆に言うとこれ以外の写真を持ってないなぁ。
基本学校で携帯は出さないし。

｢この、赤い髪の人だよ。｣

顔から腰までが写っている1枚を出し、母が覗き込む。

｢どれどれ……？

ーーーーーイッ……

ッッッケメンじゃないッ！！！！！！！｣

母の絶叫が響き渡った。

驚いた父が部屋に駆け込んできたので、2人を落ち着かせるのがとても大変だった。