第276話:振り向き ページ40
さて、そんな風に図らずも恋心を自覚してしまった私。
初デートの日まで、あと5日といったところ。
赤司さんとは生徒会とバスケ部という共通の所属活動があるけれど、クラスが離れているため放課後以外で会う機会はそれほどない。
何しろ資料室で出会うまではまともに喋ったこともなかったのである。
要するに、用事がなければほとんど顔を合わせることがないので。
(あ。この小説の主人公、少し赤司さんに似てるかも。
赤司さんは読んだことあるかな。)
(次の音楽、歌唱のテストがあるんだった。
……赤司さんって、歌も上手なのかな。
楽器は、分からないけど幾つかは弾けそう。)
とか。
用事や会う理由もないのに、ふとした時にそんな風に赤司さんのことを考えてしまうことが明らかに増えて、驚いている。
今まではなんでもなかった小さな思考のきっかけが、彼に結びついてしまう。
こんなことこれまで無かったのに。
恋とは、かくも力のある感情なのか。
ほぼ無意識で考えてしまうので、止められないしコントロール出来ない。
まだそこまで酷い症状は出ていないけれど、恋の病とはよく言ったものだ。
ただ、今の所、この感情に振り回されているというよりは、
「おぉ……恋ってすごいな」という感心に近い感想である。
何故か他人事。
会う機会があまり無いとは言えど、偶然校内で彼を見かけることはある。
なにせ歩いているだけで目立つ人なので、視界の隅にほんの少しでもあの赤色が映れば、どれだけ距離が離れていようと彼を認識してしまう。
同じ学年、同じ階層の教室ではあるので、階段や廊下ですれ違えば、「やあ、」「こんにちは」と挨拶だけすることもある。急いでいれば会釈だけで済ませたり……
そう、だから、今日のように、1階の中庭を歩く赤司さんを、2階の渡り廊下から一方的に私が見つけた時なんかは。
(あ……。)
思わず窓に一歩近寄り、揺れる赤を眺めてしまう。
クラスメイトの男子生徒と何かを話しながら、中庭を横切っていく彼。
何を話してるんだろう。あそこを通るってことは次の授業は移動教室なのかな。
そんなことを考えながら、そのまま視線を送っていると。
くるり、
ぱちっ。
「!」
不意に、赤司さんが校舎を見上げるように振り向いて、目が合った。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時