第275話:恋 ページ39
赤司さんに、つい先日言われたことを思い出す。
『理由や用事も無く、ある人に会いたくなったり、触れたくなったりする。会えたら嬉しくて、でも会えない間はその人のことをずっと考えてしまう。
好き、って…そういうことなんじゃないかな。』
……そっか。
持ちうる恋愛感情の大きさや形は、もちろん人によって千差万別、だろうけど。
交際が全校に広まり、部活まで赤司さんに会えなかった日。
拉致されて、もう今まで通りには会えないと思った時。
心が、体が、弱っているときに、一番会いたくなった人。
彼なら助けてくれるからとか、付き合ってるから、とかじゃなくて。
理屈も何も捨ておいて、わたしはあの時、
ただ赤司さんに会いたいと、
そう思ったんだ。
赤司さんのやさしさと、彼とのあたたかい日々が、
あまりにも恋しくて。
無くしてしまったらと想像した時の、切ない胸の痛み。
彼を想って、恋しく、愛しく、苦しい気持ち。
全部全部ひっくるめて、
ーーーーそうか、これが恋。
たった一人、彼だけに対する、特別な気持ちの名前。
自覚してしまえば、なんて、存在感の強い感情なのだろう。
今までもここにあったはずなのに、名前がついたら、突然彼のことばっかりしか考えられなくなってしまうような。
どうして今まで気付かなかったのか不思議に思ってしまうくらいだ。
……散々鈍いにぶいと言われてきたけど、自分の鈍さを本気で認めざるを得ない。
「…私、今から気合いを入れます。ちゃんと準備して、赤司さんの気持ちに応えたいし、
……か、かわいいって、言われたいから。」
また上昇する頬の温度を隠さずそう伝えれば、彼女は両手を広げて力いっぱい抱きしめてくれる。
「もちろん手伝うよ。何でも聞いてね。
最高にかわいくして赤司君を悩殺しちゃおっ!」
飛び出た若干古い「悩殺」というワードに不安を覚えないでもなかったが、とにもかくにも、初デートに備えて私はさつきちゃんと作戦を練ることになったのであった。
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白虎 - 赤司くんはやっぱりカッコイイですね〜 (7月21日 10時) (レス) id: eab1ac402f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2022年4月19日 19時