◇ ページ2
目黒side
亮平くんの様子が変なんです。
ちっちゃい子たちの服薬指導をしている時に聞いたその言葉。
そう伝えてきたのは担任ではない、副担任的な役割をしている若い女性の先生。
どう変なのか、詳しく教えてくれないと対処のしようがないのだけど。
ただ、学級にいるのは精神科病棟の子たちだけではないから、異変だけ察知して対処もできないまま飛んできてくれたのかもしれない。
とりあえず亮平くんの病室まで走り、翔太くんから貰った大切なタオルケットだけを握りしめ院内学級に急いだ。
教室に近づくにつれ足早になり、後ろのドアから顔をだし見た光景は思っていたより深刻だった。
先生「あ、ほら目黒くん来てくれたよー」
亮「っ……〜っ……(泣)」
担任に優しく背中を撫でられている亮平くんは椅子の上で体育座りをし、涙の溜まった目は虚ろで、小さく開いた口で必死に呼吸をしていた。
目「亮平くんどした……」
亮「は、ふっ………(泣)」
俺の声にハッとして顔を上げると、縋るように両手を伸ばしてきた。
急いで亮平くんの前にしゃがみ、担任に変わって背中を撫でて呼吸を促す。
亮「っ……めぇ、め、め……ひくっ…」
目「怖くなった？めめここにいるから深呼吸だけ頑張ろ？」
まだ呼吸が上手くいってないのに、俺の名前を必死に呼ぶ。
その度に俺の存在を確かめさせるように頭を撫でて手を握る。
亮平くんに限らず、パニックを起こした子を目の前にする度に不安になり、自信を無くす。
この子たちには俺のことがどんな風に見えてるんだろうって。
ここでの亮平くんの一番の味方はお前だよ──
ふっかさんに言われたその言葉を思い出す。
看護学生時代、翔太くんと一緒に俺にたくさんのことを教えてくれたふっかさんは俺にとって頼れる先輩で、ちょっとお兄ちゃんみたいで。
翔太くんと同じくらい、大好きで尊敬してる人。
子供たちの前では深澤先生、って呼ぶけど、ふと助けを求めたくなったりすると看護学生時代の名残でそう呼んでしまう。
だけど今は俺が助けを求めている場合ではない。
授業は止まっちゃってるし、不思議そうにこちらを見てくる子もチラホラ。
亮「かえりたいっ......」
少し呼吸が落ち着いて、最初に発した言葉。
一週間前、あんなに楽しみにしていた目標でさえ諦めたくなっちゃうのはその子の性格なんかじゃなく、紛れもなく精神的障害の症状。
一番悔しくて悲しいのは本人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おいぬ(プロフ) - チェリーさん» メッセージに送らせて頂きました( ᵕᴗᵕ ) (10月12日 22時) (
レス) id: e34387800d (このIDを非表示/違反報告)
チェリー(プロフ) - コメ失礼します。sugar and saltという小説のパスワードを教えて頂けますか？ (10月12日 17時) (レス) id: 5958ebef62 (このIDを非表示/違反報告)
おいぬ(プロフ) - ぽぽぽさん» わぁ〜本当ですか！とーっても嬉しいです( "̮ )マイペースですがこれからも読んで頂けたら嬉しいです( .ˬ.)" (2022年12月15日 20時) (レス) id: e34387800d (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ - コメ失礼します。いつもほほえましく読ませてもらってます！おまけと言っても面白い話で、ありがとうございます。これからも応援しています！！ (2022年12月15日 19時) (レス) @page28 id: ae6b64ffe5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おいぬ | 作成日時：2022年8月31日 20時
