わかりやすい恋心 ページ23
Aを好きだと気づいたのは、いつのことであったか。
時間が合えばよく甘味処や定食屋など食事に誘っていた。彼女に似合いそうな髪飾りを贈り、呉服屋に連れていって着物を仕立てた。
食事に誘うのは交流を深めたかったからだ。髪飾りもそうだった。
服については、彼女は着物を一着も持っていなかったためだ。無いと困る、必需品だという考えだった。
そこに下心を持っているつもりはなかった。
彼女自身は、自分を着飾ることに興味がなかった。いや、実はあったのかもしれない。けれど、言葉では否定していた。
「君も年頃の女子だ。お洒落を楽しみたいという気持ちがあるのではないか？」
『いえ、鬼を狩るのに着飾る必要は無いですし』
「結婚などは考えているか？」
『結婚ですか？こんな傷だらけで嫁に貰ってくれる人なんていませんし、鬼の相手で必死ですから』
Aの中心はいつも鬼殺だった。
その様子を見る度に、俺は彼女に鬼殺の道を示したことに後ろめたさを感じた。
もっと本気で彼女を止めるべきだったという、後悔に近い感情だ。
君に刀を握って欲しくない。
そんな本音を零さぬように隠す。
食事に誘って贈り物をする目的が一つ増えた。それはAを刀から遠ざけることだった。
あわよくば、“鬼殺隊を辞めて平和に生きたい”と思って欲しい気持ちがあった。
そうして次第に下心が芽生え始める。
いつも通りに誘った甘味処で団子を食べたAが、美味しいですと言って笑った時。
可憐な笑顔に、“ああ、好きだ”、と自然と自覚したのだ。
「あらあら、煉獄さんってば。好きな子の前だと随分表情豊かなんですねぇ」
「煉獄、お前…ド派手に分かりやす過ぎだろ。相手がAか、手強そうだな。どんどん押してけよ！」
「恋をしている師範、ステキだわ！Aちゃん、気付いて…！」
自分はそんなに分かりやすかっただろうか。
柱のほぼ全員にバレていた。
“炎柱と甲隊士AAはお付き合いをしている”という噂まで隊士の間で広まった。
噂に関しては都合が良い。その方が彼女に言い寄る男も減る。
そんな考えをして、Aを娶る気満々の自分に気付き、苦笑いをこぼす。
しかし周囲はこれほど察していても、彼女自身は鈍かった。どれだけ好意を表しても、気付く素振りすらない。
長期戦になりそうだと思いながら、食事に行こうと彼女を誘うのだった。
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ナキサ(プロフ) - 飛鳥さん» こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2021年11月22日 19時) (
レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥 - ものすごい大作に出会ってしまいました……ありがとうございますありがとうございます… (2021年11月22日 9時) (レス) id: d3040dc27e (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - あまねさん» 読んでくださりありがとうございます！楽しんで頂けたようでとても嬉しいです。 (2021年11月15日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑､､､待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの？私バカなの？((((喧しいわ (2021年11月14日 9時) (レス) @page23 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - meruriさん» コメントありがとうございます！感動していただけれ嬉しいです (2021年10月28日 22時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ
| 作成日時：2021年3月5日 14時
