十 ページ11
大学からの帰り道のことだった。
すっかり暗くなっているにも関わらず、人気の無い道を歩いていたのが悪かったのだろう。
動かしていた足を止めて、後ろを振り返る。
『…気の所為か』
人の姿は見えない。しかし気配がした。あの電柱あたりに。
気付いていませんよアピールで敢えて口にしたが、気の所為などではない。鬼狩りだった頃の経験もあり、人の気配には敏感になっている。
だからといってどうしようもなく、また歩き始めると、やはり背後から足音が聞こえた。
つけられている。
私はそのことにすぐに気付いた。
でも、偶然かもしれないと思い、確かめる為に曲がり角で右折を三度繰り返す。
結論から言うと、三回ともついてきた。尾行確定だ。
右折を二回までなら有り得るが、三回は偶然じゃない。三回曲がれば元の道に戻ってしまうから。
さてどうしようか。
家まではあと5分でつくだろうが…。
今の私はそこまで足が速くないし、体力も無い。走って逃げるのは難しいかもしれない。
そもそも相手の意図が読めない。私をつけてどうするつもりなのか。
しばらく何も出来ず歩いていたが、突然後ろで動く気配がした。
振り返ると、手がこちらに伸ばされていた。
腕を掴まれる。ぞわりと寒気がした。
『っ、はなしてください!』
暗くて見えにくいが、男の人だろうか。
がっしりと掴まれている手を必死に引き剥がそうとするが、力の差で押し負ける。
そのまま私をどこかへ連れ去ろうとしているようだ。
『やめ、はなして…!!』
「ふ、ふふ…かわいいね、Aちゃん…」
聞いたことのない声だった。それなのに名前を知られていることにゾッとする。
…怖い。
襲われて返り討ちに出来るほどの力を今はもう持っていない。
それでも逃げなければと、男の人の急所を蹴り上げる。しのぶさんに教えてもらった撃退方法だった。
「う、ぐぅッ!!」
男が蹲って手が離した。
その隙に全速力で走って逃げる。
ありがとう、しのぶさん…!!
「待て…!!」
そんな声が聞こえたが待つ筈もない。
息を切らして走り抜けると、男はついてきていないようだった。
家に入ってガチャリとドアを閉め、その場で崩れ落ちた。
『っふー…』
乱れた息を整え、五月蝿い心臓の音を落ち着かせた。
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ナキサ(プロフ) - 飛鳥さん» こちらこそ読んでくださりありがとうございました! (2021年11月22日 19時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥 - ものすごい大作に出会ってしまいました……ありがとうございますありがとうございます… (2021年11月22日 9時) (レス) id: d3040dc27e (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - あまねさん» 読んでくださりありがとうございます!楽しんで頂けたようでとても嬉しいです。 (2021年11月15日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年11月14日 9時) (レス) @page23 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - meruriさん» コメントありがとうございます!感動していただけれ嬉しいです (2021年10月28日 22時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ | 作成日時:2021年3月5日 14時