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捌拾壱 ページ34

『あの、煉獄さん…』
「A!どうした?」

前とは逆の立場だ。
私は煉獄家を訪ねた。

「中へ入るといい」
『あ、いえ、大した要件ではないので』

個人的には心臓がばっくばくである。
なんて言い出そうか、と悩む。
結局、唐突に財布と髪紐を差し出す変な女になってしまった。あーうまくいかない。

「これは…」
『その、この前の櫛と簪のお礼に』
「俺へ?」

はい、と返事をすると、勢いよく引き寄せられる。そしてすっぽりと腕の中へ収まった。

「ありがとう!俺の為に選んでくれたことが嬉しい!」
『い、いえ…』
「財布を選んだのは、君がそういう気持ちでいてくれていると捉えていいのだろうか!」

やっぱり知ってたか!なんとなくそんな気はしてたよ!
恥ずかしいので極力小さく頷いた。
すると抱きしめる力がぐっと強くなった。

「この髪紐、今つけてもいいか」
『ぅ、はい…』

なんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた!
煉獄さんはさっと自分の髪を解き、私があげた髪紐で結び直した。

「どうだろうか!」
『、いいと思います』
「そうか!君の色だからな!」

あーバレてるー!
とてもとても良い笑顔。
もう私はキャパオーバーだ。

『それじゃあ帰ります』
「はっはっは!君は本当に恥ずかしがり屋だなぁ」
『帰ります!!』

そうして離れようとしているのに、手は掴まれたままだ。
力勝負になった。勝てるわけないけどね!この人力強すぎだから!

『うぅ〜離してください煉獄さん!』
「ああそうだ、君はいつまで“煉獄さん”と呼ぶんだ?もう名前で呼んでくれてもいいだろう?」
『う…』

痛い所を突かれた。
いや確かにいつか言われるだろうなとは思ってたけど。

「ほら、名前で呼んだら離してあげよう!」
『う〜っ…』
「長期戦になりそうだな!中へ入りなさい!」
『それ全く逃がす気ないじゃないですか!』
「当たり前だろう!俺がどれだけ心待ちにしていたと思ってるんだ!」
『そんなに!?』

名前を呼ばれることを!?そんなに楽しみにしてたの!?

さぁさぁ、とあれよこれよという内に中へ引き込まれる。

「さぁ!杏寿郎だ!」
『きょ…じゅ…う…』
「うむ、もっと大きな声で!」
『〜っ…きょう、じゅろう…さん…』
「頑張れ!君なら出来るぞ!」

なんていう拷問だよ。

この後何十回も練習させられた。

どうにか粘って、ふたりきりの時だけという条件をつけて、名前を呼ぶことになった。

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Haruka(プロフ) - 煉獄さん推しなのでとても感動しました。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: c2932dcf70 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - 蓬莱寺さん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - すみっコぐらし好きの隅華(仮)さん» すみません、中々時間が取れなくて…!!続きを待ってくれているのはとても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
蓬莱寺(プロフ) - 続き気になります。更新楽しみにしてます (2021年1月12日 8時) (レス) id: de353d3df7 (このIDを非表示/違反報告)
すみっコぐらし好きの隅華(仮) - 早く更新して下さい!お願いします!m(_ _)m (2021年1月6日 20時) (レス) id: d6919b39a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナキサ | 作成日時:2020年12月19日 2時

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