【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

漆拾肆 ページ27

『それを一番気にしているのは自分なんでしょう？』
「黙れッ」
『そうやって自分の自尊心をなじっては必死に保とうとして、周りに当たる』
「黙れよ！」

こっちだって黙ってあげたいが、それだといつまで経っても変わらない。

『貴方、自分が愛されていないって思ってますよね』
「は？なんだ急に…」
『どうして自分は愛されないんだ。どうして評価されないんだって』

それは大きな間違いだ。
獪岳は、ちゃんと愛されている。
ただその愛情をいれる器に、穴が空いているだけ。

『善逸くんからも話を聞いていますよ』
「っあの愚図ッ！」
『貴方の事を心から尊敬している、と』
「…はっ？」

善逸に話を聞いたことがあった。
兄弟子がいて、いつも暴言を吐くから嫌いだけど、誰よりも努力家で尊敬していたと。

『貴方の師にもお会いしました』
「なにを…」
『獪岳は自慢の弟子だ。きっと素晴らしい継承者になるだろうと。
事実、他の弟子に貴方を見習うように言っていたんでしょう？認められている証拠じゃないですか』

それは、と言葉に詰まらせる獪岳。

『ちゃんと評価されていたんですよ、貴方』

自分を認めてほしい、俺はもっとすごいぞ、なんて強い承認欲求を持たずとも、元からすごい子なんだから認められてるって。

『それに私も認めてますよ、貴方の才能』
「はぁ？あんだけ色々言っておいてよく言う」
『ほんとですよ？見事な剣捌きでした。
継子になりません？』

ならねぇ、と間髪入れずに返された。残念。
絶対もっと強くなるのになぁー。

『焦らず、周りをもっとちゃんと見ること。余裕を持つこと。
それだけで貴方はもっと強くなりますよ』
「…」

獪岳は暫く黙りこんだ。
え、この空気どうすればいい？
カウンセリングは結構上手くいったよね？
帰っていい？よし帰ろう。

そう思ってたら、獪岳は口を開いた。

「なぁ、」
『はい』
「あんたの継子になる」

…。

んん！？！？いいの！？！？

「なんだ、その目。先に誘ったのそっちだろ、撤回とか許さねぇ」
『いえ、撤回はしませんけど。
うん…うん、よし。今日から君は私の継子だ。初の継子だ』
「は？初？」
『そうだよ、今まで継子取ってなかったし』

弟子くらいならいたけど、継子はいなかった。
やった、めちゃくちゃ鍛えてやろう。わくわく。

『それじゃあ、今日からよろしくお願いしますね』
「強くならなかったら切腹しろよ」
『まずはその生意気な口から治しましょうかー』

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