【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

陸拾参 ページ16

数日が経った。

「女将さん、その子買うぜ」
「困るよ、その子はまだ水揚げもしてないんだ」

これで何度目だろうか。
鯉夏花魁の荷物を部屋に運んでいる時、男の人に声をかけられる。

因みに詳しいことは知らないが、“水揚げ”とは、遊女が初めて客を取る前の儀式らしい。

私は水揚げをしていないので、一応処女を散らすことはない。安心。

ただ仕方ないので手を出さないことを条件にお客さんに酒のお酌をしてお話するくらいはする。

「あんた、すぐにでも大物になるね！」

大物になるために来たんじゃないんですけどね。

『…炭治郎くん、どう？』

隙を見て炭治郎にこそっと話しかける。

「須磨さんが足抜けをしたそうです。日記にそう書いてあったと」
『きっと偽造ですね』
「はい、俺もそう思います」

今頃善逸は捕まっているのだろうか。心配だ。
私も京極屋に行けばよかっただろうか。

そう思った時だった。

『…？』

なにやら外が騒がしい。

「さぁさぁ入ってくだされ」
「では失礼する！」

…この声…。

「本当にうちの娘を助けてくれてありがとうございます」
「何、お安い御用だ」

ばち、と燃える瞳とかち合う。


…炎柱ァ！？

「あら楼主さん、こちらは？」
「うちの花魁が礼儀のなっていない若造に絡まれてね、この方が助けてくれたそうだ」
「まぁ」

まぁ…。なんか流石っすね。
外が騒がしかったのはこんな美丈夫が歩いていたからだな。宇髄さんも騒がれてたけど。

「…すまない、こちらの美しい女性と話をしたいのだが」

私指名か。
いや美しいとか言われると照れてしまう。
分かってるよ、お世辞でしょ！

「しかし彼女はまだ水揚げ前で」
「構わない。彼女が酌をする酒はさぞ美味だろうと思っただけなのでな」
「それでしたら…」

そうして個室に2人きりの空間にぶちこまれる。
ひぇ…。
とりあえず演技をしながら話を聞かねば。
どう言い出そうか。うーん。

「はは、緊張しているな？」
『…お恥ずかしながら』

悩んでいると先に煉獄さんが話し出す。
普段より声量が低く、色気を醸し出していて。

その、なんていうか…えっち！！！

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