【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

陸拾 ページ12

「炎の呼吸 玖ノ型＿＿煉獄！！！」
「破壊殺・滅式！！！」

両者とも全力。
先ほどと比べ物にならないほどの圧。

ああくっそ、こういう力のぶつかり合いが一番間に入りにくいんだけどなぁあああ！！！
でもやるしかない！！

『漆ノ型＿＿秋夜の薄月』
「…！」

なんとか間に入り込む。
刀は満月の様に丸く弧を描き、煉獄さんの鳩尾に向かっていた猗窩座の腕を切る。

「貴様！！」
『っ、』

猗窩座が私の方に向かって蹴り上げた。
咄嗟のことで力に耐えきれず刀を落としてしまった。

「うおおおおお！！！」

煉獄さんの刀が猗窩座に届き、体を切り裂いていく。
頸までいけるか、あと少し。
…いや、無理だ、闘気を察知して刀から頸を逃れようとしている。

「ッ、しまった！」

必死な形相の猗窩座が見ているのは空。
夜が明けそうなことに気づいたらしい。

「なっ、何をして、」

私は猗窩座の腕を掴む。
煉獄さんはその意図に気付き、もう片方の腕を握った。

「くそ、離せ、どけぇっ！！」
「逃がさん！！貴様の頸を斬るまでは！！！」

煉獄さんの刀が頸へと突き刺さる。
猗窩座は藻掻く。なんて馬鹿力だ。私は両手で必死に抑えた。

刀が更に深く刺さる。
あと半分だ。

しかし猗窩座は腕ごと引きちぎり、私達の拘束を解く。
そのまま森へと走り出した。

『夜の呼吸…』
「A」

煉獄さんが追おうとする私の腕を引き止める。

「深入りは危険だ」

悔しさを滲ませながらそう言う煉獄さん。
…あと、少しだったのにな。

そう思いながら私は刀を納めた。

『怪我は大丈夫ですか』
「あぁ、君が殆どの攻撃を防いでくれたおかげでな。全く平気だ！君も無事か」
『はい、何も問題はありません』

目も潰れていないし、内臓が傷ついているわけでもなさそうだ。
…よかった。生きてる。
ただ骨折程度はしている。

『炭治郎くんと伊之助くんは？』
「俺達も平気です！」

安心した表情の炭治郎。
上弦の鬼が来るとか思わないもんね。
私も原作知らなかったらびびってたよ絶対。

伊之助は表情が分からない。
けどなんか悔しそう。助太刀出来なかったからかな。

『疲れましたね…』
「ああ、流石にな。後は隠に任せよう」
『はい』

上弦の相手はとんでもない集中力を使う。
運動量も段違いだ。疲労が貯まる。

うぅ、不甲斐ない。もっと強くならなくては。
まずは痣の発現だな。
炭治郎から伝播するはずだが、私自身で発現できないか試しておくか。

…煉獄さんが、生きててよかった。

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