【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】

弐拾漆 ページ29

あの後、お館様とは少し話をして、「期待しているよ」と言われて、ホワホワしながら帰ってきました。




煉獄さんの家に。…あれ？

「さぁ、食べるといい！千寿郎の料理は久しぶりだろう！」
『頂きます』

脊髄反射で答えてしまった。くっ恐ろしい千寿郎君の手料理！
いやまてそうじゃない。

『本当に泊まっていいんですか』
「構わん！前と同じように寛いでくれ！」

いや前もさほど寛いでたつもりは無いんですけど。推しの実家だぞ。

そう思いながら、私はどうしてこうなったかを思い出していた。









「む！」
『あ』

お館様に呼ばれた後、ばったりと煉獄さんと出会った。

「よもや！A、久しいな！息災か！」
『そくさい…？』
「？」

首を傾げた私を見て、煉獄さんも同じように首を傾げる。可愛い。

…あ、息災、とかいう言葉あったっけ。
咄嗟に漢字に変換出来ずに理解出来なかった。こういうところで大正時代の文化との隔たりを感じる。
いつも頑張ってカタカナ言葉を使わないようにしているんだよ、みんな褒めて。

「とにかく怪我もないようで何よりだ！」
『はい、煉獄さんもお元気そうでなによりです』
「あぁ！」

息災、はなんかとりあえず体調を伺う言葉だったらしい。多分。
煉獄さんはじっと私を見て、口を開いた。

「本当に鬼殺隊の一員となったのだな…」

煉獄さんのその声には、少し複雑な色を含んでいたように思う。
しかしそれも一瞬だった。

「うむ、めでたいな！隊服も似合っている！」
『ありがとうございます』
「手紙も読んだぞ！」

思わず遠い目をした。
その話はしないでください恥ずかしい。

“あー刀が来るまで鍛錬以外することないなー。あ、鎹烏いるし折角だから手紙送るかー。煉獄さんでいっかー。合格したこと知らせたいしなー”

というノリで書き始めようとしたらものすごい壁にぶち当たったわ。

まず墨で文字を書くってこと忘れてたよね…書道は小学校の時以来でほぼ初心者だし、いや手が震える震える。

そして手紙もダメだった。

“初めは拝啓でいいんやっけ？え？時候の挨拶とかってなんやっけ？どう始めんの？”

とパニクり放題。
鱗滝さんに聞こうかと思ったけど、“なんで知らないの？常識だよ？未来から来たの？”と思われるのが嫌で…(*勝手な妄想です)

そうして気合と記憶を振り絞って書いたのがこれ。何時間かかったのか。

「ここで立ち話もなんだ、俺の家に来るといい！」

そうしてお邪魔することになり、今に至る。

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