第10話 ページ10
・
暗い洞窟の中を歩く。
あの後、うるさい信を無視して河了貂に抜け道を案内してもらうことになった。
暗闇の中を壁伝いに歩く。
何も見えない中前に進んでいるので誰かに肘が当たってしまった。
「いてっ!誰だよいま俺に肘ぶつけてきた奴!」
「いちいちうるさい男だなお前は。それくらい我慢しろ」
「お前かよ!」
それはこちらのセリフだ。
耳元ででかい声を叫ばれるこっちの身にもなってみろ。
なんでよりにもよってこいつと並んで歩いているのだ。
「おいがきんちょ!火はまだか!」
「すぐつけるから待ってろ!!」
耳を塞ぎたい衝動に駆られながら火がつくのを待つ。
やがて辺りが明るくなった。
後ろを振り向くと案の定目と鼻の先に信の顔がある。
よくこの距離でこいつの声を聞いて私の耳は無事だったな。
そう一人で勝手に感心していると、前にいた贏政様が眉にシワを寄せていた。
「おい信、Aから離れろ」
「あ?…別にいいけどよ」
贏政様の鋭い言葉に信は不思議そうな顔をして一歩後ろに下がる。
もちろん私も何故贏政様が腹を立てていらっしゃるのかは分からない。
ちらりとこちらを見てくる信が釈然としない顔をこちらに向けてきた信にいいから離れろと口パクで伝え、歩を進め続ける。
「おい、いいから進むぞ」
「そうだな」
河了貂の声で再び歩を進める。
騒がしかった信もようやく大人しくなり、しばらく辺りは静かになった。
前を歩く贏政様の髪が揺れる。
ふと肩に視線を移すと、そこには赤い血がついていた。
「贏政様、お怪我ですか?」
強ばった声でそう尋ねる。
すぐに「案ずるな、A。俺の血ではない。上の血だ」という言葉が返ってきた。
良かった、贏政様がお怪我をされたのではないのか。一人でそっと胸を撫で下ろす。
「上…?うわぁ!」
後ろで信が上から落ちてきた血に驚いた。
地上ではそれ程多くの人間が殺されているのだろう。
「ひでぇ…軍の奴ら、村中皆殺しにするつもりか…
点、お前家族はいいのか?上で殺されてるぞ!」
河了貂に向かって信が再び叫ぶ。
「家族なんていねぇよ」
河了貂は何でもないかのようにそう答えた。
・
578人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
心(プロフ) - 初めまして★今更キングダムにハマり初見させて頂きました!更新楽しみにしています! (2022年8月11日 12時) (レス) @page17 id: 8b8beb8b4b (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 面白いです!更新頑張って下さい! (2020年5月30日 21時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
Yui(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみに待ってます! (2019年12月9日 0時) (レス) id: 7c69be82b3 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年7月11日 23時) (レス) id: d46901af11 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - みずきさん» ありがとうございます!頑張ります (2019年5月14日 20時) (レス) id: 11eeccd4df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Ria x他1人 | 作成日時:2019年5月5日 16時