貴方に助けられたその日から【キングダム】

第7話 ページ7

・


目の前で繰り広げられる戦いをじっと観察する。
信の動きはとても速かった。

きっと彼の身分では剣術は誰にも習えない。
独学であそこまで剣を使えるようになるにはどれほどの時間を要したのだろうか。


「ほう、まだ息があるか…しかしもう立てまい」


身体を地面に叩きつけれ、荒い呼吸をする信。
さすがにもう立ち上がれないだろう。

剣の柄に手を伸ばす。


「何も考えるな、信。漂の無念を晴らすことだけを考えろ！」


再び剣を抜こうとしたが、それは贏政様のお言葉によって阻まれた。


「お前が漂の名を口にするんじゃねぇ！」


もう立てないと思っていた彼が再び立ち上がり剣を握る。
今は亡き兄弟への思いが彼を奮い立たせたように見えた。


「アイツはもう！生き返らないんだぞ…！」


彼の言葉と共に一瞬漂の瞳が思い浮かんだ。
強い意志の宿った瞳。

信も彼と同じ瞳をしていた。


「漂と二人で話した時に聞いたのだ」


横に並ぶ贏政様が口を開く。
贏政様は信から目を離すことなく話を続ける。


「私には共に夢を志す兄弟がいると。親は違えど戦争孤児であった彼の、唯一の兄弟が」


「それが彼なのですね」


私は再び信に視線を戻した。
彼は地面を蹴って、高く飛んでいる。



次の瞬間、信の剣が男の剣を砕いた。




・

第8話→←第6話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す