貴方に助けられたその日から【キングダム】

第12話 ページ12

・



贏政様の祖父は王位に着いてわずか三日で亡くなった。
そして次に王になった贏政様の父も王になり三年でこの世を去った。


十三歳にして王となった贏政様は当然執政をすることはできず、大臣がその座を狙い毎日のように争っていた。


「大臣ってのは馬鹿ばっかだな！」


贏政様の話を聞いてそう言った信に、お前もな、とぼそっと呟く。

彼は何も気づいてない様子で「でも、なんでお前が大臣同士の戦いに巻き込まれたんだ？」と尋ねた。


「密かに王座を狙っていた成蟜が、二番手勢力の竭氏と手を組んだからだ…そして成蟜と竭氏は、俺の後ろ盾である呂氏が魏国への遠征に赴いている留守を狙って今回の反乱を起こした」


「…でもさー、よくそんな敵だらけの王宮から二人だけで逃げられたね」


洞窟の中に響く声。

こいつ、よくもまぁこんなにペラペラと贏政様に質問できるな。


「二人ではない。俺がここまで逃げてこれたのは、護衛であるAと、Aの他では朝廷で唯一信用できる文官、昌文君がいたからだ」


「昌文君!?」


後ろで驚いたように目を見開く信。

構わずに歩を進める。


「今は俺の文官をやっているが、若い頃最前線で矛を振るった英傑の一人」


そして彼は自らの私兵では反乱を鎮められないと思い、脱出計画を練った。


脱出の際、私達が昌文君と離れ離れになってしまった時のための合流地点。
その一つが黒卑村だ。


「しかしその黒卑村への下見の帰り道、昌文君は俺とそっくりな少年を見つけてしまった」



・

第13話→←第11話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す