店長がお呼びです。

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ASide


なんであんな顔してたの？


傷付いた、泣き出しそうな目をしてた。


まさか大倉店長が、
あんな顔するなんて・・・



バーに戻って、
丸山さんと飲み直そうと思ったけど。


全然、集中出来なくて。



送ってもらった帰り道。


「・・・そんなに気になる？
あの店長さんのこと」


丸山さんに聞かれちゃった。


「いえ。
あんな横暴で自意識過剰な人・・・。
女は誰でも自分が口説けばなびくと思い上がってるんです」


そうに決まってる。


私だけがなびかないから、
からかったんだ。


「そうかな。
マジやと思うけどなあ。
好きな女の人には、
どんなモテるイケメンでも、
不安になったり、
器用に口説かれへんかったりするんやと思うで？」


丸山さんがなぜか、
大倉店長をかばう。


家が見えてきた。

角を曲がればもう着く。


「もうここで大丈夫です」


丸山さんにそう伝えたら、
電灯の下で立ち止まった。


「Aちゃんのこと、
俺もええなって思ってたけど。
あの人の本気にはかなわんな。
諦めるわ」

爽やかに言うの。


いやいやいや。


私、始まる前から振られてる。


チャラ倉店長のせいだ。


「素直にならな、
幸せにはなられへんで？」


頭、ぽんぽんされちゃった。


だけど、大倉店長に、
パンフで頭叩かれた時の方が、
ずっとずっと胸が苦しかった・・・


本当は気付いてる。


気付きたくなくて、逃げてるだけだって。


大倉店長への想いから・・・




家の玄関入るなり、
男物のスニーカーがあって。


裕義兄さんが来てるんだって分かった。


離婚離婚って騒いでるお姉ちゃんを迎えに来たの。


「頼む！
誤解やって、
何回言うたら分かってくれるん？
あれは会社の取引先の人やねん。
客に冷たしてたら、
うちの会社、潰れてまうやん」


ドア半分開いた隙間から、

リビングで土下座して、
お姉ちゃんに懇願してるのが見えてる。



「でも、あの人は、
裕に気があるじゃん」


お姉ちゃん、
なかなか素直になれないらしい。

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