店長がお呼びです。

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大倉店長Side


またあの客が来てる。


丸山さんっていう、
目の前の市役所勤めのお兄さん。


結構男前やし、
人のええのが前面に出てて。

端的に言うと、
AAの好みどストライクの男。



奥のシャンプー台。

Aが丸山さんの髪をシャンプーをしてる。


「丸山さん、流しますね。
熱かったらおっしゃって下さい」


心なしか、あいつの声、
高くないか？

愛想が悪いわけちゃうねんけど。


Aって、
ぶりっ子ってとこから、
一番程遠いとこにおるくせに。


なんていうか、
Aは独特の雰囲気の子で。

初めて会うタイプやった。


女の子特有のキャピキャピ感が全くない。

我が道を行く感じ。


俺の理想のタイプとは真逆や。



やのに、なんでこない、
アイツの事ばっか、気になるねん。



丸山さんは、

月に一度、来店して、
必ず、まだ２年目のAを指名する。


Aはいつもはみんなの小間使いやけど、

丸山さんだけは、
一人前の美容師扱いしてくれるから、
あの人が来る日は、
うきうきしてんのが分かるねん。


「いつもの感じでよろしいですか？」


やっぱ、声が甘い。


なんやねん。


俺には朝から、

昔のモデル時代の事で、
散々悪口言うてきて。


お客さんの後ろで、鏡に映る自分の姿。


ピアスの穴、埋めよかな。


とか、しょうもない事まで、考えてまうやん。俺がブローしてる間に、
丸山さんはもう会計してるんが、
鏡の端っこに映ってる。


Aと親しげに話してるんに、
イラッとなる。


名刺？


確かに今、
丸山さんが、Aに名刺を渡した。


こっちもブロー、終わり。


「いかがでしょうか？」


後ろも手鏡で見せて、確かめてもらう。


俺が入店してから６年来のお客さんで、
美咲さん。


「やっぱり大倉店長にしてもらうのが一番いいわ。
ねぇ、そろそろ美容師辞めちゃうってほんと？」

早耳やな。


「父親に本社に来るように言われてて。
でも、この店に愛着ありますし。
もうしばらくおりたいなあって思ってます」

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