店長がお呼びです。

大倉店長がお呼びです。 ページ19

ASide


開店前の美容院verte１号店。



朝っぱらから、
先輩たちが雑誌を広げて、
きゃあきゃあやってる。


「Aちゃんも見てみなよ」


夏子先輩が持ってたのは、
１０年ぐらい前の、
有名な男性ファッション誌。


そこに・・・


なんと、


チャラ倉店長、もとい、
大倉店長が気取ったアンニュイポーズで載っている。


「な、な、な、・・・」


声が出ない。


なんという。


こんな仕事までしてたとは。


「びっくりだよねぇ。
こんなことしてたとは。
かっこいいもんねぇ」

「ほんと、１０年前も今も同じくかっこいい」


みんな、うっとりしてる。



「そうですか。
チャラさ全開じゃないですか」


つい本音を言っちゃってるではないか。


チャラ倉店長なんか大嫌い。


人使いは荒いし、
ここの店の美容師や、
この階下の一階の店舗のエステティシャン全員に、
手を出してそうなほどチャラいし。


おまけに、
実家は手広く、
美容院やエステを経営してるお坊ちゃんで。


２５歳からずっとここの店長らしい。


今年、３０だから、
そろそろ本社に戻るとか戻らないとか、
噂になってる。



いろいろムカつく存在だ。


「Aちゃんは、
一体どんな男がタイプなのよ」


夏子先輩が聞いてきたから、
正直に。


「公務員です。
お堅い職業に就いてて、
チャラチャラしてない真面目な人。
ピアス開けてる男と、
３Bと、そして、イケメンは論外です」

顔で男を選ぶと失敗する。


つい先週、
浮気されて家出して実家に舞い戻って来たお姉ちゃんを見てて、
ひしひしと感じてる。


そこに。


「それ、俺のことやろ」


気の抜けた声で言いながら現れたのは、
チャラ倉、


じゃなくて、大倉店長。


「大倉店長、おはようございます。
これ、本当に店長ですか？」


夏子先輩が大倉店長にすり寄ってってる。


「懐かし。
どこで見つけてきたん？
恥ずかしいわ」


てことは、本人なんだ・・・


ちっ。


「大倉店長、モデルもやられてたんですか？」


ベタベタ、
大倉店長の腕に触りながら聞いてるのは、
真奈美先輩。

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