店長がお呼びです。

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やっと、Aが泣き止んでくれたみたいや。


照れたんか、急に離れてもうた。


「うわあ。綺麗。
村上店長、こんなとこ、よく知ってたね」


「ああ、まあな」


「前にも来たことあるの？」


「いや、初めてや。
調べただけで」


「そっか」


嬉しそうに、俺を見上げてる。


ここ、キスするチャンスよな。

いや、あかんか？


「A・・・」


もっぺん肩を抱こうとしたら。


「さっきの、二十歳の抱負。
もう叶っちゃった」


嬉しそうに言いながら、
俺に背中向けて、波止場をはしゃいで歩き出した。


かわされて、肩透かし。


俺も、追いかけてく。


「正社員とカレー以外の抱負あったんか？
まさか、夜景見ること？」


そう聞く。


「そんなわけないじゃん。
村上店長って、
なんでこうも鈍感なんだろう？」


独り言にしては、でかい声や。


「じゃあ、指輪か？」


「それもあるけど・・・」


急に小声になって、
Aが立ち止まる。


「ん？なんや？」


聞こえへんから、
口元に、耳寄せたら・・・


「二十歳の間にデートすることと、
初カレ作ること」


こしょこしょって言われた。


あかんやつやわ。これ。


柄やないけど、胸がきゅーんて鳴いたぞ。


言葉、失ってもうてる俺に、


「今、デートしてるんだよね？
私、村上店長の彼女になれたんでしょ？
違うの？」


ちょっと拗ねたような、
寂しそうな声がして。


「違わんで。
今日から、Aは俺の彼女や」


て、答えたけど、

顔、真っ赤っかやろうな、俺。


ほっぺたも、
どこもかしこも、
めっちゃ熱いわ。


今度こそ、キスのチャンス到来や。

思てんけど・・・


Aに、そんな気はないんは、明白で。


「やった！
じゃあ、写真撮ってもいい？」


返事する前に、
携帯出してきて、
パシャパシャやり始めた。


俺は一体、何を焦ってんねやろ。


「店長も笑ってよ、ほら」


「おもんないのに笑えるか」


「もおっ」


「はよ、貸してみろ。
俺が撮ったるから」


携帯取り上げて、肩を抱いて。


カシャって撮った一瞬前に、
ほっぺたにキスしたった。

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