店長がお呼びです。

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「たまにはって何やねん。
人聞き悪い。
俺はいつでも優しいやろが」


「優しいかもしんないけど」


まさかの肯定で返事が来て、
混乱中。

その後に、


「けど、信じらんないぐらいに鈍感でガサツだから、だいぶとマイナス」


思くそ、悪口、付け足された。







Aはめちゃめちゃお喋りや。


予約してあって、
連れてったバーは、

大人びた静かな雰囲気やって、
圧倒されてたんか、

大人しめやってんけど。


バーを出て、
車に乗り込んでからは、

堰が切れたように喋り出して、

止まれへんなって。

ずーっと賑やか。


高校ん時の友達の話やら、
家族の事やら。

あんまし聞きたないねんけど、
今日出会ったばっかの、
大倉とヤスの話も。


ほんま、可愛ええ声してるねんなあ。


「村上店長、聞いてる？」


「おお、ちゃんと聞いとるわ」


「嘘ばっかり。
煩いなあって顔してる」


「いや、よう喋るなあ思て」


可愛ええなあ思ってたとは、
よう言わんやろ。


「いいじゃん、別に」


「何も悪い言うてへんやろ」


「煩いって思ってたら、おんなじだよ」


拗ねてもうたやんけ。

参った。


「思てへんて。
聞いたるから。
話してみ？」


「その言い方、上からだからいい」


ほんまは喋りたいくせにな。


うずうずしてんの、分かる。


「なあ、二十歳になったけど、
抱負とあんのか？」


しゃあないから、
こっちから話題振ることに。


「抱負かあ。
今年中に正社員になる事。
あとは、彼ぇ、」


途中まで言いかけて、やめよった。


「カレー？」


「そう、カレーの食べ歩き」


「そないカレー好きやったんか？
今度、旨い店、連れてったるわ」


「ほんと？」


「ああ。別にええで。
二十歳の目標がカレーて。
低い山やな」


「低くないよ。
正社員になるっていう目標は」


Aは、お父さんが急死して、
大学進学を諦めて、

高卒で就職した会社の上司のパワハラで、
一年で辞めて、
うちのクレープ屋に来てん。


こう見えて、意外と苦労人やねん。


パワハラ上司にはムカつくけど、
まあ、そのおかげで出会えたわけやしな。


「お前ならなれるわ。
手先、めちゃめちゃ器用やねんから」


「そうかなあ。
あんまし無責任な事、言わないでよね」


「無責任も何も。
俺が店長やないか」

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