店長がお呼びです。

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何気に葵ちゃんの的を得た意見が、
じわじわ効いてきてやな。


こっぱずかしい思いしてまで、
指輪も買うてきたし、

ドライブも行きたいんやったら、
連れてってやりたいな思って。


酒のふりして、今日は茶しか飲んでへんし。

こいつは、気付いてないやろうけど。



んでも、

その指輪もらう相手も、
ドライブの運転席の男も、

俺でええんか？っちゅう、
根本的な問題を、

今、思い出したわけや。


こんなおっちゃんより、
歳近いヤスの方がええに決まってるよな。


女の子の喜ぶような事、
照れずにやってのけそうやし。


邪念が入って、強引に行かれへん。


Aは黙ったまんまで、ビルの壁とにらめっこ中や。

なんの根比べやねん。


「A、聞こえてるか？
はよ車まで移動しようや。
さすがに寒なってきたやろ」


Aの半袖の腕、掴んだら、
ひんやりしてて、びっくりした。


慌てて、俺の着てたジャケット被せたったのに。


「なんで車なんか置いてるの？
だから、さっきお酒飲んでなかったの？
ビールも葵ちゃんにあげてたし。
どこ行くの？
みんなそこにいるの？」


今度は、怒涛の質問。

まだ背中向けたまんまやけどな。



「みんなはまださっきの店で飲んどるわ」


「・・・帰るんなら、いい」


「すぐには帰れへん。
次の店予約してあるねん。
そこでちょっと飲み直して。
そっからドライブでも行くか？」


「え・・・？」


やっと、振り返ってくれた。


「何拗ねてんねん。
理由、教えてくれや」


「村上店長、今なんて？」


思いっきし、声が被った。


「飲み直して、ドライブでも行くか、聞いただけや」


予想外に、Aの顔がぱっと輝く。


「ほんと？みんなで？」


また、みんなか。


「みんなのがええんか？
まだヤスとおりたいんか？
あ、大倉の方か？」


あかん。

嫉妬全開や、これ・・・


「ううんっ。
村上店長と二人がいい。
ほんと？二人だけ？」


ぶかぶかの俺のジャケット着た子に、
泣きそうな顔して聞かれて、

きゅんてしいひん、男おらんやろ。


「二人だけや。
誕生日祝いに」


「やった！
村上店長もたまには、
優しいじゃん」

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