店長がお呼びです。

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ちょっと、胸が詰まるわ。


けどな。

そもそもやで？


拗ねてる理由が、よう分からん。


「A、お前、何に怒ってんねん。
バーでなんかあったんか？」


葵ちゃんと喧嘩してる様子はなかったし、
ヤスも大倉も、物腰やらかいし。

嫌なことはされてへんと思うねんけど。


「・・・」


「黙っとったら、分からんやないか。
ヤスに口説かれたん、
ほんまは怖かったんか？」


「くっ、くっ、口説かれてなんかないしっ」


「はあ？思いっきし口説かれとったやんけ。
嬉しそうな顔しとったくせに。
ヤスと付き合うんか？」


あかん、なんでか、喧嘩腰。

しかも余計な一言まで。


その質問はあっさりスルーされた。


「なんで追いかけて来たの？
雇用主としての責任？
ならもういいよ。
今日から二十歳だから一人で平気」


聞いたことないような、
冷たい声で、最後通告みたいに言うて、

俺に背中向けるねん。


「そんなんとちゃうわ。
車、そこに置いてるから。
ええから。
はよ行くで」


Aは俺の言葉なんか、無視。



実はおとといな、

Aの誕生日プレゼント買うために、
葵ちゃんの店にブランドバッグ買いに行ってん。


ほんだら、

俺、Aにあげるとはひとっことも言うてへんのに。


「Aはブランド物のバッグも財布も興味ないよ。
それより、可愛いハートのピンキーリング欲しがってた」


て、にやにやしながら言われてん。


ピンキーリングの意味知らんかってんけど、
そこはまあ、後で指輪の店で聞けばええか、思うてたら、

いそいそと雑誌出してきてな。


「ここに載ってる、このハートの指輪。
めちゃくちゃ気に入ってたよ。
小指にはめて、運命の人と繋がるんだって。
あの子、案外、乙女でしょ？」


従姉妹ならではの、
そんな裏情報まで小出しにしてきよって。


おまけに、


「理想のデートで、
ドライブがいいって言ってたから、
車の中で、良い雰囲気で告白したら？
きっと上手く行くよ。
恥ずかしくても、
たまには、女の子の喜ぶようなベタなことも、
やってのけないと。
Aとは永遠と付き合えないよ？」


そんなダメ出しされた。


あんな子供、興味ないわ、
そん時は答えたものの。

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