店長がお呼びです。

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ちょっと何やねん。

ここ抜けて、二人だけで、
誕生日祝うたるつもりやったのに。


親が迎えに来てるとか、言い出して。


「では失礼しますっ」


だだっと、ものすごい勢いで、
走ってってもうた。


立ち上がったヤスの肩に手をかけて、押しとどめる。


「俺が行く」


やから、あいつに手ぇ出すなよ、っていう、
牽制こめて。


ヤスは、ぽかんとしてて。

その代わりなんか何なんか。


大倉が。


「村上オーナー、
もしかして、Aちゃんに気ぃあるん？」


目ぇ、まん丸にして聞いてくる。


あんまりにも意外やったんか、
声、ひっくり返っとるやんけ。


「悪いんか？」


睨みきかしたったのに、
大倉はでっかい口開けて笑うてる。


「悪くはないけど、おもろい」


「おもろて結構。
お前に構っとる暇ないねん。
ほい、これでみんなの分、払とく」


万札２枚置いて、
慌てて、Aを追いかける。


店の階段駆け下りて、
外に出たけど、

まばらな人影の中に、
Aの姿はない。


「あいつ、酔うてた割に、逃げ足速いな」


「ほんま、心配かけよって」


「どこ行ってん。
親に電話なんかしてへんやろ。
絶対に嘘や」


「あいつ消えてもうたら、
次の店、予約時間に行かれへんやんけ」


ブツブツ言いながら、
地下鉄の駅に向かって歩いてたら。


ビルとビルの隙間から、
鼻をすする音が聞こえてきた。

それから。


「独り言でかい。
葵ちゃんと次の店の予約あるなら、
私なんかほっとけばいいじゃん」


そんな文句言う、可愛い声も・・・


「お前、そんなくっさいとこおったんか？
ばっちいやんけ、はよ出て来い」


飲食店の裏出口やぞ？

ゴミ箱置いてある。


「いい。
ここにしばらくいる。
別にばっちくないし。
村上店長に関係ない」


反抗的な態度やなあ。


「ばっちいやろ。
臭いし。
多分、ネズミとゴキブリおるで」


その一言で、


「ねっ、ネズミっ？？
うきゃぁっ！！！」


大騒ぎして、すっ飛んで来た。


何やねん、この可愛いさ。


「ネズミ怖いんか？」


「怖い。気持ち悪い」


「ミッキーマウスもか？」


「村上店長ってバカなの？
どう考えても別ものじゃん」


しらあっとした目で見てくるけど、
真っ赤やし、
頬には涙の筋が残ってる。

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