第五十六話 ページ7
「ただいまー」
扉を開け放ち声をあげる。
自分の声が家中に反響したような気がした。
靴を脱ぎ捨て、しっかりと揃えてから家に上がる。
リビングでは楽しそうな胡桃の声がして、思わず疲れも吹き飛ぶ。いや、本当に。
私がリビングの扉を開ける前にそれは開かれ、中から暁が顔を覗かせた。
「どうした、いつもより遅かったじゃねぇか」
「あぁ、ごめん……ちょっと立ち話してて」
「?そうか?今日は肉が安売りしてたから大量に買ってきたぞ」
「了解。 じゃあ今日は何にしようかな……」
鞄を机の上に置き、私は頭を捻った。
ハンバーグ?……が、妥当かな。
「ひき肉?」
「あぁ」
じゃあ選択肢は最初から一つしかなかったみたいだ。
私はキッチンに置かれた買い物袋の中から数パックのひき肉を取り出す。
確かに大量に買ってきている。……え、この数日間毎日ハンバーグフラグ?
暁は肉が大好物で肉さえ食えれば残りの人生謳歌できるタイプだが、私たちは違う。
特に胡桃の食事バランスに対しては十二分に気を付けなければいけないというのに。
大体、安売りしてたというのだから主婦たちの争いがすごかったはずなのにどうやったらこんなにいっぱい取れたんだろう。
伊達に不良じゃないってことかな……。
「おねーちゃん!テレビ見てい?」
ふわりと首を傾げる胡桃。
ツインテールとぬいぐるみの組み合わせが殺傷力抜群だ。
ここが二次元だとしたらきっと私は今鼻血を噴いてるかもしれない。
「うん、いいよー。 でもテレビ見終わったらちゃんと宿題やろうね」
「うん、やる!」
「今日宿題いっぱい?」
「えっとねー、漢字いっぱい書くの」
そう言いながらいそいそとテレビのほうへ向かう胡桃。
時計を見ればもうすぐ5時。
成程、そろそろ胡桃の大好きな番組が始まる時間だ。
「あ、そうだ」
時計の真下にあるカレンダーに目がいき、私は思わず口を開いた。
そんな私の声を聞いた暁は、スマホから目を離し私のほうを見る。
私はそれに気付きながらもカレンダーから目を逸らさずに言葉を終える。
「私、今週の土曜日出かけるから。 暁、胡桃を連れて外食にでも行ってよ」
「あ?……どこ行くんだよ」
「……んー」
言葉を濁す。
ハッキリと言ってしまっていいのだろうか。
仮にも教師と出かけるというわけなのだから、あまり知られないほうがいいだろう。
「……千佳とお出かけ」
「どこ行くんだって聞いてんだろが」
「まだ決まってない。 ショッピング行くだけだよ」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時