第九十七話 ページ48
「ふざけんなよ……こんな傷だらけになって……お前、女の子だろ……」
「……へ……」
私のより一回りは大きそうな親指が、あやすように私の頬を撫でる。ぴり、と痛みが走ってようやく顔も怪我をしていたことを知る。
「……痛かっただろ……つらいな……怖かったか……?……もう大丈夫だからな」
そっと、私の傷を痛めないように、だけどそれでいて力強く、私の頭が先生の肩に押し付けられる。先生の力強いその腕は私の背中に回された。
抱きしめられてる。そう気づいたとき、私の涙腺は崩壊してしまった。
だってあったかかった。ここは寒すぎた。太陽の当たらないここは寒くてジメジメしていて、一人だった。それに痛かった。あちこちすごく痛かった。独りぼっちは寂しくて怖かった。辛かった。先生はきっとそれをすべて理解してくれた、一瞬で理解して、だから、それは、
「ぅ、あぁああ……っ……あぁああああんっ……!ふぅ、あぁあーーっ……うぇえ……あぁあああああっ……!」
「……いっぱい泣いていいぞ、大丈夫だからな」
「いたっ、ひっく、いたいっ……ひっ、いたいよぉ……!」
「本当だよ、あちこち血まみれじゃねぇかお前……帰ったら即病院だぞ」
「うぇえええっ……せんせ、っく、せんせぇっ……!」
「うん、ここにいる。 ちゃんとここにいるから思う存分泣け」
「ごめ、ごめんなさっ、ごめんなさいぃいいいっ……!」
「うん、もういい。 お前が無事でよかった。……っくそ、本当に良かった……」
「うわぁあああんっ……!!」
もう、こうやって子供みたいに声をあげて泣くのなんて何年ぶりだろう。
でも先生の前で私は泣いてばっかりだ。それを笑いもしないからかいもしない、先生はいつも私を抱きしめて受け止めてくれる。そんな先生からいつも香る香水の匂いが好きで好きで溜まらなくて。
結局私は数分間ずっとずっと泣き続けていた。
***
「……せんせ」
「……ん」
「も、だいじょぶです」
「そっか」
そういいつつも先生はすぐに私を離したりすることはせず、安心させるように私の背中をその大きな手のひらで数度撫でた。
どうしようもなく落ち着く。どうしようもなく心地いい。
いまだに私の鼓動と合わせてずきずきと患部が痛むけど、その痛みも吸い取られてるように少しだけ軽くなる。
うつらうつらと舟をこぎそうになって、あわてて私はきつく目をつむって自分を醒ました。
ゆっくりと先生から離れて、立ち上がろうとしたけど、やっぱり無理だった。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時