【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第九十四話 ページ45

「お前は次のチェックポイントの教師に事情を話してそこで待機していろ！いいな！どこにも行くんじゃねぇぞ！……返事だ返事！！」
「は、はい！！」
「ふざけた真似すんなよ、絶対ェだぞ！！……俺は今からあいつを迎えに行く」
「む、迎えに行くって、」
「テメェは余計な事気にしてんじゃねぇよ！！さっさと行け！！」

笹塚の怒号にはじかれたように、樹は草陰の向こうに姿を消した。
それを見送った笹塚は、深く呼吸をする。そして右足に力を込め、そのまま急斜面に向かって飛び降りた。

***

「……っだい……」

痛い。その一言しか出てこない。
思ったより人間の脳の生存願望と本能は強いらしくて、落ちている間私の腕は無意識に頭をかばっていた。転がり落ちていた間の記憶はあまりなくて、気づいたら足を使って自分の体をその場にうまいこととどめることができた。
おかげさまで頭に怪我などは一切なかったけれど、腕はもう擦り傷切り傷で目も当てられない惨状だ。やばすぎて詳しく説明することはできないけどとりあえず目も当てられない。足をくじいてはいないらしいけど酷使してしまったせいで筋を痛めている。太ももにもひどく深い切り傷ができている、おそらくそこら辺の枝が刺さって裂いたんだろう。
漫画の中とかでよく崖から落ちて足くじいたーっていうテンプレストーリーがあるけど普通に考えてくじいたーだけで終わるはずないからね。言っておくけど。私が証人。

「まさか私がそのテンプレストーリーの主人公になるとは……」

自分の迂闊さに苦笑しか出てこない。
でも樹や和樹くんや千佳じゃなくて私でよかったと思う。自分で自分の自己犠牲的思考に嫌気がさしてしまうけど。
きっとすぐさま彼らは助けを呼んでくれる。先生たちに話をして、先生がきっと助けに来てくれる。あぁ、きっといっぱい怒られてしまうなぁ。「優等生のお前がなんで」みたいに叱られるんだろうなぁ。優等生だからってなんでもかんでも正しいことをするわけじゃないんだよなぁ、優等生だって間違えるんだよなぁ。
なんだか、いやだなぁ。

なんとか自分の体を起こして、その場に座り込む。
どこかに移動したいけれど、できるならとっくにしている。痛みがひどすぎてそう遠くには行けない。それにあまり動き回るとかえって助からなくなる。広さも深さもよくわからないし、私にできることはじっとして助けを待つことだけだろう。
せめて水でもあれば傷口を洗い流せたんだけど。

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