第九十三話 ページ44
「馬鹿野郎!お前ら自分が何をしたのかわかってんのか!!」
びくりと三つのまだ幼い肩が跳ねる。
泣き止まない千佳の背中をそっとさする男二人の顔はひどく歪んでいる。
ここでの俺の仕事は叱ることじゃない、と頭の中では理解していた。だがこの行き場のない怒りも衝動も、どうすればよかったのか彼には分からなかったのだ。
きっと彼らは俺が思っている以上に反省し悔いている。自分のしたことくらいわかっている。だけどそれでも怒鳴らずにはいられなかった。
「っくそ!!……っ、知崎、お前らはほかの教師に連絡取れ!俺の携帯を使え!連絡先の中に先生って文字が入ってるやつには片っ端から連絡してお前らの口で説明しろ!誰かひとり俺についてきて、邦月が落ちた地点を教えろ!!」
「お、俺が行きます!和樹、お前は知崎についてやれ!」
「わかった、気を付けろよ樹、先生も!!」
笹塚から携帯を受け取った和樹は、千佳の背中をさすりながらすぐに連絡先の一番最初にあった名前をタップし電話を掛け始めた。
それを確認した笹塚は樹を連れて彼らが先ほどまで入っていた森の中へ入っていく。
「俺が先を歩く!テメェまで滑り落ちるんじゃねぇぞ!」
「はい!」
こいつは確か部活のエースだったはずだ、と笹塚はろくに回らない頭で考える。ちゃんと気を付けていればバランスを崩すことはないだろう。
だんだんと細くなっていく獣道、ガサガサとなりやまない草むら、今にも何か飛び出してきそうな雰囲気になぜこいつらはすぐさま引き返さなかったのかと頭を抱えたい思いだった。
そしてようやく出口が見えてきたところで、背後から樹が笹塚に向かって叫ぶ。
「そこです!出口付近で滑った俺を、奏音が……!」
急に立ち止まった笹塚にぶつかりそうになった樹はすんでのところでブレーキをかける。
「お前は出口に向かえ」
「だ、だけどそこなんかぬめってて、だから俺滑って、」
「俺が支えてやる。早く行け!」
「は、はい!」
確かによく見れば段差になっている岩には苔が生い茂っている。これで滑ったのだろう。
再び滑りそうになった樹を支えてやると、笹塚の手を借りた樹はようやく向こう側に着くことができた。その出口のすぐ向こうには次のチェックポイントで待機している教師がいるはずだ。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時