第九十一話 ページ42
曇りだったとはいえ明るかったはずの空は深く木々とその枝に生い茂る葉によって遮られていた。先ほどまでの道とは一転まったくもって整っていない獣道を私たちは携帯から明かりを出しつつ歩いた。
途端ドスのきいた悲鳴のような鳥の鳴き声と翼の羽ばたきが響き渡り、目の前を歩いている千佳の小さい肩がびくりと跳ねた。
「大丈夫?千佳」
「う、うん、びっくりしただけ……ここまで暗いと雰囲気出るね……」
「そうだね、気を付けてね本当」
道はどんどん細くなっていき、次第に私たちは列になって歩きはじめる。先頭を切るのは何となく野生の勘が働いているらしい樹、冷静な判断ができそうな私、そして少しだけ不安定な千佳とそんな千佳の後ろを守るように後ろを歩く和樹くん。
先ほどから近くの草むらはひたすらにガサガサと耳障りで、不安から私たちの口数は次第に減っていく。足取りは当たり前に重くて、ただひたすら私たちは前を歩く。今更「やっぱり戻らない?」だなんて誰も言えるはずがなかった。
たった三分のはずなのに、もう数十分は経っているような錯覚に陥る。
「……あれ、出口か?」
「えっ」
ばっと顔をあげて樹の肩越しに前を見る。
確かに、木々の隙間から光が差しているように見えた。
「っ、そうかも!」
「っへ、っしゃあそうこなくちゃな!」
「あーもう永遠にこのままだったらどうしようって思った!」
「何事もなくてよかったよ本当に……」
口々に安堵の息を吐き、場の雰囲気は一気に和らいだ。足取りも当たり前のように軽くなり、先ほどの沈黙がウソのようだ。
私たちはお互いに顔を見合わせ、よかったよかったと言い合いながらペースを速めた。
「うっし、このまま行って絶対ェに一位とるぞ!」
「賛成!」
腕を振り回す樹にくすりと笑みをこぼし、私も声をあげる。
ようやく余裕が出てきて、私はあたりを明かりで照らして見回してみた。確か先ほどの地図によれば、ここは山と山の間、つまり凹みたいになっていたはずだ。つまりもし私たちの右を行く道があればそのまま隣の山まで歩いて行ける。だが残念ながら私たちの右にあるのは急斜面くらいだ、それも下に向かっていくやつ。
「俺一位とったらドリンクバーで元とれるくらい飲んでやる!」
「腹壊すぞ……」
「千佳―、私たちはパフェ食べようパフェ」
「特大サイズのやつ一人一つずつね!」
「それは、さすがに無理……」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時